著者
蒲生 忍 マッコーミック トーマス
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.149-157, 2010-09-23

米国の終末期の医療選択としては1998年にオレゴン州で発効した尊厳死法Death with Dignity Act(以下DWDA)が最も先鋭的な枠組みとして取り上げられる。これは医師による自殺幇助Physician-Assisted Suicideとも呼ばれ、その施行状況が米国内のみならず日本を含めた諸外国の注目を集めている。オレゴン州はDWDAのみならず、緩和医療が最も活発に行われる州としてもよく知られている。オレゴン州に隣接するワシントン州でも、2008年にDWDA案が住民発案された。その可否を問う住民投票が大統領選挙と同時(2008年11月4日)に行われ、58%の支持を受け可決され2009年3月5日に発効した。筆者らは投票日に先立ちワシントン州で、DWDA案の立案にかかわった元ワシントン州知事Gardner氏はじめワシントン大学の医療提供者と面談し意見を聞く機会を得た。面談した様々な医療提供者の多くは、法案が自己決定に固執する一部の層のためであること、オレゴン州DWDA施行後の緩和医療を含め医療技術に大きな進歩があり、尊厳死を含め終末期の医療選択への要求が変化していることなどを指摘した。投票前の諸氏との議論を踏まえ、ワシントン州DWDA発効後の実施状況も報告したい。

言及状況

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