- 著者
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石井 カルロス寿憲
- 出版者
- 日本音声学会
- 雑誌
- 音声研究 (ISSN:13428675)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.3, pp.18-28, 2006-12-30
- 被引用文献数
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日常対話音声の正しい理解や,対話における話者交替の制御,更には自然な対話音声の合成を行なうためには,韻律特徴の適切な操作は不可欠である。日本語では,句末の音調は,疑問・強い主張・意外性・促しなどの文のモダリティを表示する機能,フォーカスを表示する機能,大きな意味の区切りの表示,または発言がまだ終わっていないことを示す談話機能など,さますまな役割を持つ。また,句末に終助詞が付くか否かによって,句末音調がもたらす機能が変わる。本稿では,対話における話者交替の談話機能に焦点を当て,句末の形態素や品詞などの言語情報を考慮し,句末音調の役割について論ずる。自然会話音声データを用い,300ミリ秒以上のポーズで区切った発話区間の句末において,形態素と談話機能のラベルを付与し,音調を表す音響的特徴を抽出しか。分析の結果,多くの形態素では,句末音調と話者交替の談話機能に関連が見られたが,主に終助詞を含んだ一部の形態素では,関連が見られないことが示された。また,複数の品詞が同じ形態素で表現される場合があり,言語情報を用いる際の注意点について述べる。