著者
得丸 公明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.236, pp.21-26, 2011-10-11
参考文献数
18

筆者は情報理論の一般通信モデルにもとついて,言語通信システムを,情報源,送信機,回線,雑音,受信機,宛て先という要素に分け,それらの要素間を音節というデジタル信号によって組み立てられたシンボルが流通するものとして分析してきた.以下では,神経細胞のもつ感覚・記憶(記銘と保持)・想起(再生と再認)・評価(二分法)・判断(二元論)・運動制御などの生命体のもつ基本的な生得の神経機能(量子スイッチ機能)だけで言語機能はすべて説明できることを示す.言語はヒトだけがもつため,ヒトには言語や文法を生みだす固有の言語獲得装置(Language Acquisition Device)や文法遺伝子が存在するという説もあるが,もしかすると存在しないのではないか.デジタル信号入出力のために,母音を発声するための喉頭降下と運動制御,ウェルニッケ野に母語音素痕跡記憶がヒト固有の身体的特徴である。言語の効率よい情報伝達は,脳の進化や新たな遺伝子の出現ではなく,ヒトが獲得したデジタル信号にもとつくシンボルと,それに最適化した自然発生的・自己創出的な神経細胞ネットワークのおかげである.チンパンジーにくらべて約4倍大きな脳は,膨大な語彙記憶の保持装置である.デジタル信号の順列によって生みだされる無限の語彙(単語)が,体験記憶と結びつけば具象概念であり,論理記憶と結びつくのが文法や抽象概念である.これらもすべて基本的な神経作用として説明できる.そうであるなら,人の本性は善である.

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