著者
井口 篤
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.63-68, 2011

本稿の目的は水村美苗の小説『私小説 from Left to Right』を言語とアイデンティティの観点から論じることである。『私小説 from Left to Right』は日本語と英語の二言語で書かれており、二言語のどちらにも共感できない水村の深い疎外感が作品には色濃く現れている。水村は多くの日本人読者を失う代償を払って小説に英語を織り交ぜるのだが、それは日本語と英語の二言語を受け入れつつも距離を取らざるを得ない水村の作家としての苦境を表現しようとしたものである。

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