- 著者
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金杉 高雄
- 出版者
- 太成学院大学
- 雑誌
- 太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.53-62, 2012-03
"現代日本語については研究分野が多種多様に行き渡っている。音韻、形態、意味、文法の各分野ではかなりの膨大な調査と研究が試みられてきている。そのような多岐にわたる研究の中でも、現代日本語が今、いかに変化を遂げつつあるのか、そしてかなり以前から変化が起こり、現在も進行中である現象について調査・考察を行う。10代の人々が使用する語彙、発音の仕方、アクセントの置き方を目の当たりにすると、驚きと同時に非常に興味深く感じることがよくある。言語の移り変わりに関心をいだき、その変化の原因を探ろうとする側にとっては生きた貴重な教材であり、研究対象となる。電車に乗り合わせた中学生、高校生の「言語」にはいささか、面食らう。当のご本人たちにとっては自然な語彙、文法、発音、アクセントのはずである。助詞、助動詞らしき語を何とか聞き取っても、話が盛り上がるにつれて、言っていることが理解できなくなることがある。それだけ、言葉の変化が目まぐるしく進んでいる証拠であろう。言葉はこころと密接に関係しているので、変化が激しい分、それだけ認知主体(話し手・聞き手)の思考態度も劇的に変化していると捉えることができる。新たに創造された表現の動機づけを探ることは根気の要る多くの時間を費やす調査・研究になる。しかし、我々が普段、見聞きする新造語は言葉とこころとの深い絆がいかにして成立しているかを捉えることができる最良の素材の一つである。その理由に日本という土地と文化的背景を共有していることが挙げられる。本稿は新造語として若年層に特有と見なされているはずの「ラ抜き言葉」を中心に考察を進め、言葉とこころとの密接な関係に一歩でも接近することを目指す論考である。"