著者
雜賀 亮一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, no.30, pp.145-156, 2011-03

第92回全国高等学校野球選手権大会地方大会(以下,第92回地方大会とする)49地区の試合結果をもとに,先制点をあげたチームの勝率から,先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析すると共に,勝つために望ましいゲーム展開を考えた。結果,第91回全国高等学校野球選手権大会地方大会(以下,第91回地方大会とする)と同様に,先制点をあげたチームの勝率が高く,先制点をあげることが勝敗に影響を及ぼすことが判った。
著者
文 鐘聲
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.119-126, 2009-03

在日コリアン認知症高齢者はその発症・進行に伴い,母国である韓国・朝鮮語(以下朝鮮語)での会話が主になるといわれるが,その報告はほとんどない。本研究は,朝鮮語の会話が主になっている在日コリアン認知症高齢者に対し,ADLや認知症レベル,抑うつ,渡日歴や識字などを調査することにより,認知症状と言語に関する関係を明らかにすることを目的とした。2007年10月,大阪市内の介護老人保健施設利用者6人とその家族に対し半構造的面接を行った。対象は全て女性で平均年齢は88.6歳,平均介護度は2.3であった。施設入所者が3人,在宅(デイケア利用者)が3人であり,全員が在日1世であった。6人全員が学齢期に未就学であった。認知症レベルについて,HDSR(日本語)の平均点数が5.5,HDSR(朝鮮語)が5.8であり,朝鮮語での質問の方が回答時間も短かった。抑うつについて,GDS5(日本語)の平均値は2.3,GDS5(朝鮮語)の平均値は1.7であった。在日コリアン認知症者は,識字率が低く日本語の理解よりも朝鮮語での理解力が高いと考えられ,コミュニケーションの手段としての朝鮮語の重要性が示唆された。
著者
黒川 正剛
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.15-30, 2007-03-31

The imp or the familiar is the characteristic English witch-belief, and frequently referred to in the witch-hunt documents in early modern England. The imp is a kind of demon, which is given to the witch by the Devil when they make a contact with. It was believed to cause harm such as disease or death to the human being and livestock. It was also believed to suck the blood from the witch, and to be transferred to one witch by the other witch or to the child-witch by the mother-witch. Did people consider the imp as the truth in those days? If they took the fiction as the truth, what dynamics worked there? In this paper, we investigate the problem of truth on the imp-belief in the pamphlet, W.W., A true and just Recorde (1582). In conclusion, the imp-belief is based on some truth, and the powers of the pamphlet writer and the examiner play important roles in this belief.
著者
雜賀 亮一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.127-138, 2010-03

野球は,「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) 基本的には,1回から9回の間で相手チームよりたくさん得点し,勝つことを目的としておこなわれるスポーツであり,サッカーやラグビー等のように時間に制約されることなく,同じ条件で攻守が与えられる。本研究では,時間に制約されることのない野球において,先制点が試合の勝利に優位を示すかを調べた。先制点をあげたチームの勝率から,先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析すると共に,勝つために望ましいゲーム展開を考えた。結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先に得点することが勝敗に影響を及ぼすことが判った。結果をもとに勝つために望ましいゲーム展開を考えると,前半(1回〜3回)に全神経を集中させ,この間に先制点をあげる為の攻守の戦術をいの一番に考え,明確にして試合に臨むことが重要であるといえる。
著者
文 鐘聲
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.141-148, 2012-03

近年,在日コリアン高齢者の集住地域における健康調査が行われ,社会経済的問題を含む諸要因が明らかとなってきた。本研究は大阪市内にある介護老人保健施設Aを利用している在日コリアン高齢者を対象に半構造的面接による調査を実施し,在日コリアン高齢者の健康状態および生活の実情を明らかにすることを目的とした。対象者は,在日1世,とりわけ後期高齢者が多く,女性が多かったことから,識字問題が顕在化していた。また,経済的問題も大きく,無年金,生活保護の問題も顕在化していた。対象者は介護老人保健施設利用者であったため,認知症をもつ高齢者も多かった。現病歴については,生活習慣病に罹患しているものが多かった。ADLも低下しており,転倒を経験しているものが多かった。高齢者を介護するにおいて,歴史的経緯や言葉,食事,生活習慣の相違,文化を配慮することは,日本人,外国人を問わず重要なことであり,利用者のニーズを満たすための活動が,より広範な施設において望まれる。
著者
高橋 清
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.67-71, 2010-03

本研究は、2008年3月に行われたJBLプレイオフ・ファイナルの4試合を対象とし,バスケットボールの試合においてリバウンドの獲得本数が試合の勝敗にどのような影響を及ぼすのかを,オフェンスリバウンド,ディフェンスリバウンドについてそれぞれ比較し,分析を試みたものである。その結果,オフェンスリバウンドは獲得本数の優劣が,試合の勝敗に直接関係するのではなく,獲得したオフェンスリバウンドを得点に結びつけた割合が高値の試合において,試合の勝敗に多大な影響を及ぼすことが認められた。ディフェンスリバウンドにおいては,両チームのインサイドでプレイする選手にリバウンドにおける技術の優れた選手が存在し,自チームのディフェンスリバウンドを確実に獲得した結果,ディフェンスリバウンドの重要性は再認識することができたが,獲得本数による優位差は認められず,試合の勝敗に及ぼす要因に至らなかった。
著者
高橋 清
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.59-65, 2015-03

本研究は2013年8月31日〜10月14日まで開催された,関西学生バスケットボールリーグ戦3部リーグでの太成学院大学バスケットボール部が対戦した11試合を対象とし,「得失点率」,「攻撃回数」,「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」,「リバウンド獲得数」,「ターンオーバー数」について,分析を試みたものである。その結果,2013年度関西学生バスケットボールリーグ戦3部リーグでの太成学院大学バスケットボール部の戦いが明確になった。「得失点率」においては,リーグにおける順位に関係していることが確認できた。「攻撃回数」においては,目標数値を設定し上回ることが出来たが,得点に結びつく結果には至らなかった。「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」は,2013年度のチームの特徴を活かした,オフェンスを展開することが数値より認められた。「リバウンド獲得数」においては,日々の取り組みが数値として認められたが体格差を埋めることは出来なかった。「ターンオーバー数」では,フェンダメンタルのスキルアップの必要性が確認された。この結果は,太成学院大学の競技レベルを把握できるとともに,今後の練習プログラムの設定やコーチングに役立つと考えられる。
著者
中桐 謙一郎
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.225-232, 2011-03

抽象的な否定概念は具体的な空間概念における経験を基にして理解されている概念である。この二つの概念は「容器のメタファー」を基盤として理解されている。「内外」や「越境」などの概念によって捉えられる否定概念は,「ない」を用いた否定文によって主に存在論的に「Xがない」や認識論的に「Xではない」の二種類で表される。この二つの概念はそれぞれものの「存在」とものの「存在の仕方(=存(あ)り方)」に依存している。そのような概念化を可能にしている要因は「視覚」である。すなわち,「否定概念」は視覚という人間の五官による「身体的」な概念化を基盤としている。
著者
黒川 正剛
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-77, 2008-03

The studies that regard the witch-hunt as sacrifice are many. R Girard's theory which regards the witch as scapegoat is the most famous among them. But it is difficult to say that the problems of sacrifice and scapegoat in the witch-hunt have been researched in detail. The purpose of this paper is to examine the problems of the witch-hunt as sacrifice again, and to show, if the witch-hunt is sacrifice, what the characteristic of this sacrifice is. After morphological analysis on the Pappenheimer's witch-hunt in Bavaria (1600), we examine the use of the word "sacrifice" in Jean Bodiris De la demonomanie des sorciers (1580). We arrive at the conclusion that the witch-hunt is the sacrifice certainly, that is "the inner sacrifice", and this sacrifice has the element of "eros".
著者
中塚 健一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.215-221, 2015-03

米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授による政治哲学の講義が放映されたのをきっかけに,日本でも「哲学ブーム」が起きた。日常生活とは縁遠いと思われる哲学を,身近に起こりうるジレンマを用いて議論するスタイルが,多くの人々に受け入れられた。わが国の教員養成課程の「教育学」関連の講義でも,教育哲学などが扱われているし,また,ジレンマに立たされることを想定して思考を深めていく講義なども実践されている。しかし,学校教育と哲学的課題を関連づけるのは難しいと学生には受け止められ,敬遠されがちであった。本稿は,哲学の問題を,社会生活で起こりうるジレンマと関連させながら,学生の思考を深めていく手法をとるサンデルの講義から,教育の直面する課題と哲学の関係を探り,教職課程の講義の改善につながるヒントを見出すことを試みる。
著者
寺田 治史
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.203-214, 2015-03

前著論文(II)では,「グルントヴィの事を誰よりも深く理解している方は池田先生です」と語るヘニングセンの言葉を紹介した。だが,何故にそこまで言い切れるのかについての疑問が残っていた。筆者自身5度目となる今回のアスコ-訪問では,故人となられたヘニングセンの後継者である南デンマーク大学准教授のイ-ベン・バレンティン・イエンセン女史に,これについての質問を行った。1)イエンセン女史の答えは,「グルントヴィは,言葉や理論よりも実践を大事にする人でした。池田先生は,グルントヴィの考えと同じことを現在において実践しておられ,その姿を見てヘニングセン先生はそのように評価されたと思う」と。2)「実践の人」との言葉を聞いた時,筆者の頭の中をよぎった言葉がある。それは,「道理証文よりも現証にはすぎず」という日蓮の言葉であった。3)この意味するところは,理論よりも実践,言葉よりも行動を重視して,現実の上に実証を示すことが大事であるという教えである。ヘニングセンから見て,グルントヴィも池田も人間教育の有言実行の人であることをイエンセン女史も認めていることになる。2013年8月23日,アスコ-校で開催された「アスコ-池田教育セミナ-」においても,ヘニングセンは,「最も優れた学力教育でも足りないものがある。平和,自由,民主主義こそが啓発を促す。池田氏が語る『教育』にも,この意味は全て備わっている。今日の世界的指導者として唯一そのことを世に紹介し続けている。勇気ある者であり,牧口の道を継ぐ者である」と語り,これが氏の生前最後の講演となった。4)グルントヴィ研究の第一人者と言われたヘニングセンをして,ここまで評価された池田が,そのヘニングセンとの対談において,多数の仏典を紹介しながら,自身の人間教育論に昇華し展開していることに筆者は着目した。何故ならば,内村鑑三をはじめ,グルントヴィとデンマークの教育を日本に紹介した先覚者は数多いが,いずれも仏教指導者ではなかったからである。5)今日,創価大学・学園などやアメリカ創価大学を創立した上に,広く世界に平和を訴えて,「教育のための社会」へのパラダイム転換を提唱し,推進し,行動しているのが池田であり,その意味ではグルントヴィをも凌いでいるのではないかと筆者は考える。本論文では,その池田の哲学的背景とも言える,仏典の引用と彼の人間教育論についての考察に挑戦してみようと考えた。
著者
高橋 清
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-72, 2014-03

本研究は2012年9月1日〜10月14日まで開催された,関西学生バスケットボールリーグ戦4部リーグで太成学院大学バスケットボール部が対戦した11試合を対象とし,「攻撃回数」,「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」,「リバウンド獲得数」,「ターンオーバー数」が試合にどのような影響を及ぼすかについて,分析を試みたものである。 その結果,2012年度関西学生バスケットボールリーグ戦4部リーグでの太成学院大学バスケットボール部の戦いが明確になった。「攻撃回数」においては,目標数値の76.0回を上回る,76.8±5.8回であった。「2Pゴール成功率」,「3Pゴール成功率」は,2012年度のチームの特徴を活かした,オフェンスを展開することが数値より認められた。「リバウンド獲得数」においても,日々の取り組みが数値として認められた。「ターンオーバー数」では,フェンダメンタルの重要性が再確認された。この結果は,太成学院大学の競技レベルを把握できるとともに,今後の練習プログラムの設定やコーチングに役立つと考えられる。
著者
雜賀 亮一
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.157-163, 2011-03

第92回全国高等学校野球選手権大会(以下,第92回全国大会とする)において先制点をあげたチームの勝率から先制点が勝敗にどのような影響を及ぼすかを分析した結果,先制点をあげたチームの勝率が高く,先制点をあげることが勝敗に影響を及ぼすことが判かった。第92回全国大会においては,先制点が勝利に結びつく割合が,第92回地方大会よりも大きく,改めて先制点の重要性を認識することとなった。全国大会における試合は,先制点をあげることで80%以上の勝率が得られる。先攻後攻においては,1回戦〜準々決勝以前の試合は後攻を,準々決勝以降の試合は先攻を選ぶ。前半(1回〜3回)で先制点を得点することがポイントとなるが,地方大会に比べ,初回における先制点のウエイトが小さくなっており,中盤(4回〜6回)までの粘りが必要となり,地方大会に比べ接戦になる試合が多いと言える。野球は「各チームは,相手チームより多くの得点を記録して,勝つことを目的としている。正式試合が終わったとき,本規則によって記録した得点の多い方が,その試合の勝者となるである」(公認野球規則,2009) ことから,早い段階から得点を重ねていくことが重要である。
著者
八木 一成
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.101-107, 2013-03

伊賀地方は三重県伊賀市と名張市を指し,両市の人口の合計は17万6千人,大阪と名古屋を通勤圏とし,伊賀市を通る国道25号(名阪国道)沿いには企業の工場,倉庫等が立地している。一方,総面積の59%が森林,9%が経営耕地であり自然環境が豊かな中で農業が営まれている。また,伊賀市は社団法人全国愛農会の本拠地であり,2010年3月には伊賀有機農業推進協議会が発足し,有機農業に対する意識の高い地域でもある。本稿では有機農業の特性を考察し,建設的な取り組みを行なっている有機農家の集まりのひとつである「伊賀有機農産供給センター」について,作り手(生産者)と受けて(消費者)の両方の立場から有機農業の持つ可能性を論じるものである。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016-03

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-62, 2012-03

"現代日本語については研究分野が多種多様に行き渡っている。音韻、形態、意味、文法の各分野ではかなりの膨大な調査と研究が試みられてきている。そのような多岐にわたる研究の中でも、現代日本語が今、いかに変化を遂げつつあるのか、そしてかなり以前から変化が起こり、現在も進行中である現象について調査・考察を行う。10代の人々が使用する語彙、発音の仕方、アクセントの置き方を目の当たりにすると、驚きと同時に非常に興味深く感じることがよくある。言語の移り変わりに関心をいだき、その変化の原因を探ろうとする側にとっては生きた貴重な教材であり、研究対象となる。電車に乗り合わせた中学生、高校生の「言語」にはいささか、面食らう。当のご本人たちにとっては自然な語彙、文法、発音、アクセントのはずである。助詞、助動詞らしき語を何とか聞き取っても、話が盛り上がるにつれて、言っていることが理解できなくなることがある。それだけ、言葉の変化が目まぐるしく進んでいる証拠であろう。言葉はこころと密接に関係しているので、変化が激しい分、それだけ認知主体(話し手・聞き手)の思考態度も劇的に変化していると捉えることができる。新たに創造された表現の動機づけを探ることは根気の要る多くの時間を費やす調査・研究になる。しかし、我々が普段、見聞きする新造語は言葉とこころとの深い絆がいかにして成立しているかを捉えることができる最良の素材の一つである。その理由に日本という土地と文化的背景を共有していることが挙げられる。本稿は新造語として若年層に特有と見なされているはずの「ラ抜き言葉」を中心に考察を進め、言葉とこころとの密接な関係に一歩でも接近することを目指す論考である。"
著者
尾上 孝利 西口 尚志 足立 裕亮
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.19-29, 2008-03

近年、わが国の住宅はクーラーや暖房の効率化を求めて高気密化が進められ、結露によるカビ発育での建築材の汚染や劣化、カビが形成した胞子や産生物質によるアレルギーやシックハウス症候群が問題となっている。一般家庭の浴室は湿気対策が不十分でカビが頻繁に発生している。本研究では換気と拭取り法で浴室の湿気管理法を検討した。晴天時機械換気(浴室の入口と窓を閉めきり、換気扇のみ)、晴天時自然換気(浴室と脱衣所の入口と窓を開けて換気)および雨天時自然換気の3方法で7時間換気後に水滴が残った部位は、床面、浴槽のふち、鏡の接合部分、鏡台の上、鏡台下の壁面、窓サッシおよび浴室入口の右側などであった。残水部位の多くでカビが発育しており、カビ発育部位と残水部位はよく一致していた。換気7時間後に水滴が残り易い窓のアルミサッシを対象に晴天時機械換気と晴天時自然換気法で1時間換気後に窓サッシに付着した水滴を拭取り、換気を続けた結果、換気7時間後に窓サッシで水滴は見られなかった。以上のことから、個々の浴室で残水のでき易い場所をみつけ、換気1時間後に水滴を拭取り、各壁が乾燥するまで換気すれば、湿気管理ができると考えられる。
著者
大西 巧
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.169-180, 2012-03

東京職工学校や東京工業学校の卒業生の就職先の中には、各地の工業学校の前身校や師範学校が選ばれている。工業系の学校でありながら、教育機関に就職したのはなぜか。それは東京職工学校設立の理由の一つに、府県の職工学校の教員を養成する使命があったから。特別生制度や工業教員養成所の開設により、この使命は制度化され、工業界の活況にあわせ各地の工業学校設立の需要に応じた。各地に設けられはじめた職工学校や工業学校は、東京職工学校や東京工業学校の付属校をモデルとした。その初期の工業学校に卒業生は校長として、また教員として赴き学校の基礎を作った。大正5年の記録によると、全国工業学校35校中その校長32名は何れも東京工業学校の卒業生であり、各校の教員も多数を占めた。本稿では、東京職工学校の発展過程や国家の実業教育政策を明らかにし、東京工業大学・前身校の中等工業学校教育に果たした役割を考察したものである。
著者
山本 純子 徳珍 温子 小坂 やす子 長谷川 幹子
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.177-186, 2010-03

本研究の目的は,看護学生の就業動機と自己同一性(自分の確立)との関連を検討することである。看護大学生198名を対象に,下山1)の自分の確立尺度と安達2)の就業動機の尺度を使用して調査を行った。その内容は,自分の確立尺度と就業動機の昇順項目の検討をしたうえで,因子分析を行い,両尺度の関連性を把握するために重回帰分析にて検討した。その結果,自分の確立尺度では,自己否定はなく理解してくれる人はいるが,心が傷つきやすく,何事にも不安に思っていることがわかった。また,就業動機の下位尺度から,仕事に対する責任感や上位志向が低い傾向にあることが示された。さらに,2つの尺度間の関連は,説明変数を,自分の確立尺度として学生,祖父母との同居の有無,就業動機を目的変数として分析したところ,以下の項目で有意に関係していた。学生では,主体性(p<0.05),親密性(p<0.01),また,祖父母の同居の有無は,親密性に(p<0.01),さらに,探索志向は,確実性(p<0.001),統制性(p<0.01),挑戦志向では,能動性(p<0.01),親密性(p<0.001)で有意に高く関係していた。つまり,看護学生の就業動機の探索志向の積極的姿勢には,自分と自分の世界に対する現実感や信頼感を持っていることや自我の統合力に関連があることがわかった。また,挑戦志向では,困難な仕事に挑戦し,自己成長しようとする姿勢を自分でコントロールしながら,積極的に関わっていこうとする能力や人との関わりを持ちたいと思う対人関係の柔軟性の関連を示していた。就業動機に関して,受容性および主体性は有意な関連はなかった。