著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-40, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
9

ミュンヘン一揆によってヒトラーは国家反逆罪による実刑判決を受けた。ナチ党は裁判所から解党処分を言い渡される。当時のニューヨークタイムズはナチ党が解党処分になったことにより,すでにドイツ全土で著名となっていたヒトラーが今後,活動することはないであろうと報じるほどであった。しかし,ヒトラーは服役中にナチ党を再建するための構想を著した『わが闘争』を口述筆記により完成させたのである。出所後,ナチ党の解党処分が解かれたのと同時にヒトラーはナチ党を一から立て直すことに着手,成功する。そして,完全にドイツ国民を扇動することになる。これはヒトラーの手腕と共に国民啓蒙宣伝省の担当大臣を務めたヨーゼフ・ゲッベルスがラジオ,新聞,映画等のメディアと特異な街頭演説の一つである「早朝プロパガンダ」そして「夜間の松明行進」等,斬新なプロパガンダを導入し功を奏した結果であると言っても過言ではない。人の能力を正確に見ぬくヒトラーの眼識がゲッベルス流のプロパガンダを開花させ,ナチ党を国会での第一政党に,さらにはヒトラーを首相・総統にまで押し上げたのである。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016 (Released:2017-05-10)

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.23-34, 2019 (Released:2019-06-04)
参考文献数
7

「何のために英語を学ぶのか?」という問いかけに対して,「グローバル時代だから,英語ができるようになっておかないといけないのではないか」等の漠然とした返答をよく耳にする。グローバル化の時代,文部科学省は将来のグローバル人材育成のための基礎を築く戦略の一つとして,2020年より小学校3・4年から外国語活動を,5・6年からは外国語科としての授業を義務づけている。すなわち,小学校5・6年からは教科としての「英語」が必修となり,教科書が選定され,英語の成績が成績表に記載される。英語の成績に関しては,明確な目的意識を持っているかどうか,が成功する者と失敗する者とを分ける鍵になる。例えば,自分の人生の目標を達成するためには英語ができるようになることが絶対に必要だ,という環境に置かれれば,英語の習得は成功するであろう。自分の人生の目標を見つけるため等と称して,とりあえず,語学留学してみようという漠然とした動機では失敗に終わる。また,英語さえできればそれで良い,というわけでもない。異なる文化,生活習慣,価値観を持つ人々との多文化共生の中でお互いを認め合いながら,共に生活することができる異文化間能力が我々に求められている。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.19-30, 2016-03

アドルフ・ヒトラー (Adolf Hitler)を総統とする国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)について1920年〜1924年にかけて節目となる出来事を中心に観察を試みた。1920年にヒトラーが開いた最初の大衆討議会(meeting rally)では参加者は僅か25人にしか過ぎなかった。ところが,ニュルンベルグにおける第6回ナチ党・全国大会での参加者は8万6000人にも達していたのである。本来,ドイツ国籍ではなかったオーストリア人のヒトラーがナチ党の総統となり,このような興隆期を成就させた要因の中には少なくとも以下の4項目について,ドイツ国民を巧みに扇動することに成功したことにあったと考えられる。(1) 第一次世界大戦の敗因は軍部の共産主義者・社会民主党支持者・ユダヤ人による (2) ヴェルサイユ条約でのドイツへの理不尽な戦争責任賠償 (3) ドイツ経済が不況に陥ったのは政府の政策が間違っていたからである (4) ユダヤ人がドイツ人の職を奪っている。画家志望の青年,ヒトラーが第一次世界大戦でのドイツの敗戦に憎悪したことがナチ党の結党へと結びついた。やがて,ナチ党は第二次世界大戦を勃発させ,全世界で6000万人にも及ぶ犠牲者を生み出すことになる。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-62, 2012-03

"現代日本語については研究分野が多種多様に行き渡っている。音韻、形態、意味、文法の各分野ではかなりの膨大な調査と研究が試みられてきている。そのような多岐にわたる研究の中でも、現代日本語が今、いかに変化を遂げつつあるのか、そしてかなり以前から変化が起こり、現在も進行中である現象について調査・考察を行う。10代の人々が使用する語彙、発音の仕方、アクセントの置き方を目の当たりにすると、驚きと同時に非常に興味深く感じることがよくある。言語の移り変わりに関心をいだき、その変化の原因を探ろうとする側にとっては生きた貴重な教材であり、研究対象となる。電車に乗り合わせた中学生、高校生の「言語」にはいささか、面食らう。当のご本人たちにとっては自然な語彙、文法、発音、アクセントのはずである。助詞、助動詞らしき語を何とか聞き取っても、話が盛り上がるにつれて、言っていることが理解できなくなることがある。それだけ、言葉の変化が目まぐるしく進んでいる証拠であろう。言葉はこころと密接に関係しているので、変化が激しい分、それだけ認知主体(話し手・聞き手)の思考態度も劇的に変化していると捉えることができる。新たに創造された表現の動機づけを探ることは根気の要る多くの時間を費やす調査・研究になる。しかし、我々が普段、見聞きする新造語は言葉とこころとの深い絆がいかにして成立しているかを捉えることができる最良の素材の一つである。その理由に日本という土地と文化的背景を共有していることが挙げられる。本稿は新造語として若年層に特有と見なされているはずの「ラ抜き言葉」を中心に考察を進め、言葉とこころとの密接な関係に一歩でも接近することを目指す論考である。"
著者
金杉 高雄
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.13-24, 2018 (Released:2018-04-02)
参考文献数
6

1933年1月30日(月),ヒトラーはドイツの首相に就任した。ヒトラーが政権を掌握したときのドイツ帝国は約500万人にも及ぶ登録失業者を抱えていた。3月以降,ヒトラーはナチ党の政治に対する世界観を確固たるものにすることを目的に幾多の法令を制定することに取り掛かる。共和国大統領令を発令することに加えて,1933年3月23日(木)には全権委任法を可決させ絶対的な独裁政治へと国民を引きつり込むのである。独裁政治への道のりとして国民を扇動することに長けていたゲッベルスはナチ党の政治に対する世界観を国民に刷り込むことを目的とした様々なプロパガンダを企画・展開し陰の総統として大きな役割を果たした。政権掌握後,初めての党大会は1933年8月30日(水)~9月3日(日)にかけてニュルンベルグのツェッペリン広場で行われた。参加者は40万人に上り大成功を収めた。1934年8月2日(木),ヒンデンブルグ大統領が崩御すると,ヒトラーは大統領の全ての権限を首相に併合させた「総統」という新たな地位に就いた。「総統」の是非を問う国民投票では90%以上の賛成票を得ていたのである。
著者
金杉 高雄 猪池 雅憲
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.53-57, 2013

本学の海外研修のあり方について, 参加者数の動向, アンケート調査, 教育観光学の視点そして事前・事後学習から引率・指導を担当した教員の海外研修に対する見解をまとめている。海外研修委員会(旧全学海外研修分科会)が発足して以来, 海外研修へ参加する学生の数は伸びている。そのような現実の中で, 参加した学生の大部分は自分自身の中に今まで気づくことができなかったもう1人の自分を発見している。これは大学生という感受性豊かな人生の1コマにおいてこそ収穫することができる財産と化している。新しい自分を発見するきっかけとなったのは海外という異国の地であるからこそ洗練される協調性と連帯感がかなり育まれたためであろうと考えられる。海外研修は学生諸君の自己啓発に重要な役割を果たしている。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-36, 2014-03

「毎度 ! 儲かってまっか 」,「えぇ、ぼちぼちでんなぁ」。大阪人のことばの文化, 話の本題へ入る前のこのようなあいさつの文化の背後にはその地域の人々にしか分からない伝えることばの奥深さがある。ことばを使って相手に自分の意図を伝える場合, 直接的もしくは間接的に伝える方法がある。話し手が字義通りに解釈することを聞き手に期待するのではなく, 言外の意味を読むことを聞き手に期待する間接的な表現の場合, ことばと真意との間にはギャップが生じる。間接的に自分の意図を相手に伝える場合では, 聞き手はそのことばの背後に隠された素顔の人間心理を顔の表情, 声のトーン, 身振り, 手振り等から読み取らなければならない。このような自分の意図するところを字義通りではなく間接的に相手に伝える活動は人間のみが発達させた手法である。そこでは, 時にメタファー・メトニミーのレトリックが用いられる。言外の意図を探ることを話し手が聞き手に求める人間心理の背後には話し手の置かれた状況と生まれ育った環境、経験からの背景知識が相互に関わりあっている。話し手が伝えたい真の意図を聞き手がうまく捉えられない場合に考えられることは認知主体間の主観性が大きく影響を及ぼしていることである。
著者
金杉 高雄
出版者
太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.51-60, 2011-03

言語学の発展は現代の科学技術の進歩と切り離すことはできない。意味を中心とする言語学ではメタファー、メトニミーの研究がより活発に進められてきた。この分野ではGeorge Lakoff が最も重心的な研究者である。しかし、言葉の意味を研究する上で必要に迫られるのが、言語学以外の隣接分野の知見である。Lakoff は自分の言語理論をより包括的に発展させるために、Mark Johnson (シカゴ大学)という哲学者を招き、共同研究をし、研究書を発表している。あまりにも有名な「Metaphors We LiveBy」である。この著作を発表した後、彼らは再び、「Philosophy in the Fresh」を世に出しその研究成果を問うている。この2 作目の共著では「Philosophy」という言葉がタイトルに取り入れられ言語学と哲学的思考の関係の深さが全面に出ている好例であるといえる。さらに、認知文法(CognitiveGrammar)を提唱する Ronald Langacker は哲学者、Heidegger の影響を大きく受けていることは周知の事実である。彼はHeidegger の思想に基づいて数多くの認知モデルを提出している。言語学がいろいろな形で姿を変えて進展するのには興味が引かれる。そのような動向の中で、特にここ10 年の間に注目されてきた分野として語用論と歴史言語学とを体系的、有機的に組み合わせた「歴史語用論」がある。この言語学は文法化、主観化、間主観化をキーワードに研究が進められてきている。言語学の新しい方向性である。言語学と隣接分野との組み合わせ、そして従来の歴史言語学と比較的目新しい語用論との組み合わせによる研究方法に加えて、認知言語学と歴史語用論とを組み合わせた研究方法に関してのその輪郭について日本語を中心にして、その意味変化を取り扱いながら試論を行うものである。