- 著者
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上田 晴彦
- 出版者
- 秋田大学
- 雑誌
- 秋田大学教育文化学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03651649)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, pp.17-24, 2012-03
江戸時代後期の秋田県の庶民が記した『夜籠雑談噺』は、当時の庶民の暮らしぶりや自然観が見て取れる貴重な史料である。とりわけこの中には太陽・月・惑星の距離・大きさに関する天文数値と地球に昼夜がある理由に関する挿絵が記載されており、大変興味深い。本研究ではこれらの天文数値・挿絵がどのような由来を持っているかを、当時の天文学書に記載されている数値・図と比較することで検討を加えた。その結果、天文数値については江戸時代中期の書物『和蘭天説』に依存していることが判明した。また挿絵については、江戸時代初期の書物『天経或問』に影響を受けている可能性があることが分かった。これらの結果を踏まえて、江戸期の秋田県地域における庶民の自然観についての考察をおこなった。