著者
上田 晴彦
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03651649)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.23-30, 2013-03-31

佐藤信淵の天文学の書である『天柱記』には天体に関する独自の考えがちりばめられているため,江戸時代の日本天文思想を考察するうえで重要である。特に地動説については極めて斬新な見方をしているが,その事実がこれまであまり指摘されてこなかった。そのため本論文では「天柱記」の地動説に関する記述に注目し,佐藤信淵の天文思想のどの部分が重要なのかを,他の天文書と比較し考察した。またデカルトの渦動説との関係については,その類似性を指摘した。最後に『天柱記』刊行本の太陽図が違っている理由について,現在までの調査で判明したことを報告する。As Noburiho Sato's original idea about a heavenly body is inlaid into "Ten-tyuu-ki", it is important to know astronomical thought of Japan in Edo period. Although original descriptions about the Corpenican theory in "Ten-tyuu-ki" are very important, this fact has not been pointed out clearly until now. We therefore focus on descriptions about the Corpenican theory in "Ten-tyuu-ki", and examine the important idea of Nobuhiro Sato by comparing with other astronomical documents. Moreover, the similarity is pointed out between Nobuhiro Sato's idea and vortex theory of Descartes. We finally report the reason of the difference of solar figure between publication books of "Ten-tyuu-ki".
著者
上田 晴彦
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03651649)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.17-24, 2012-03

江戸時代後期の秋田県の庶民が記した『夜籠雑談噺』は、当時の庶民の暮らしぶりや自然観が見て取れる貴重な史料である。とりわけこの中には太陽・月・惑星の距離・大きさに関する天文数値と地球に昼夜がある理由に関する挿絵が記載されており、大変興味深い。本研究ではこれらの天文数値・挿絵がどのような由来を持っているかを、当時の天文学書に記載されている数値・図と比較することで検討を加えた。その結果、天文数値については江戸時代中期の書物『和蘭天説』に依存していることが判明した。また挿絵については、江戸時代初期の書物『天経或問』に影響を受けている可能性があることが分かった。これらの結果を踏まえて、江戸期の秋田県地域における庶民の自然観についての考察をおこなった。