著者
湯山 英子
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.365-385, 2011-11-25

本稿の目的は,1910年代から1940年代初めを対象に,仏領インドシナにおける対日漆輸出の展開を,現地の日本人商店の活動に焦点をあてて検討し,解明することにある。同時に,この時期のアジア域内,台湾,中国での漆貿易の担い手,および流通過程を明らかにする。これまでの研究では,戦間期における対日貿易の担い手の検討がなされていないまま,1940年以降の日本企業進出に関する研究が主流を占めてきたという背景がある。検討の結果,現地日本商は,1910年代から,本格的には1920年代はじめから日本向け漆輸出,あるいは輸出のための調査や営業活動に奔走し,1930年代には漆供給基地として仏領インドシナでの地歩を固めていったと考えられる。また,その背景および要因として,(1)日本での需要の変化による原料獲得の必要性,(2)日本商による仏領インドシナでの流通経路の掌握,(3)日中関係悪化による中国での流通構造の変化,(4)台湾での漆栽培と「国産化」の推進,この4点が確認できた。

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