著者
湯山 英子
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.227-240, 2020-01-17

本稿では,戦後ベトナムからの「引揚げ」と「残留」に関する調査で得られた,関連資料の所在を提示し,それら資料の検討を行うものである。本研究の大きな目的は,第2次世界大戦後ベトナム(場合によっては,仏印と記する)からの「日本人」引揚げの過程および全体像を解明することにある。そのため,次の4つにそって,調査・研究を進めている。①可能な限り数量的に確認することで全体像の把握をする。②個別体験の集約・集積によって,(個々の経験を)全体における位置づけをする。これによって③戦前,戦時期の再検討と④「人の移動」の通史を構築することが可能になる。初段階として,上記①と②を明らかにするにあたり,どういった関連資料があるのか,最近のアーカイブス公開状況を踏まえて,その部分をまずは示しておきたい。
著者
湯山 英子
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.365-385, 2011-11-25 (Released:2017-05-19)

本稿の目的は,1910年代から1940年代初めを対象に,仏領インドシナにおける対日漆輸出の展開を,現地の日本人商店の活動に焦点をあてて検討し,解明することにある。同時に,この時期のアジア域内,台湾,中国での漆貿易の担い手,および流通過程を明らかにする。これまでの研究では,戦間期における対日貿易の担い手の検討がなされていないまま,1940年以降の日本企業進出に関する研究が主流を占めてきたという背景がある。検討の結果,現地日本商は,1910年代から,本格的には1920年代はじめから日本向け漆輸出,あるいは輸出のための調査や営業活動に奔走し,1930年代には漆供給基地として仏領インドシナでの地歩を固めていったと考えられる。また,その背景および要因として,(1)日本での需要の変化による原料獲得の必要性,(2)日本商による仏領インドシナでの流通経路の掌握,(3)日中関係悪化による中国での流通構造の変化,(4)台湾での漆栽培と「国産化」の推進,この4点が確認できた。
著者
湯山 英子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.107-121, 2013-02-21

本稿の目的は, 1910年代から1940年代はじめにかけて仏領インドシナにおける日本商の活動を明らかにすることにある。特に財閥系商社である三井物産と三菱商事の人員配置および取扱品に注目し, 該当時のアジア支店がどのように営業活動を展開したのかを検討する。結果, 次の2つのことを明らかにした。(1)三井物産はホンゲイ無煙炭の取り扱いに優位性を示した。これは1910年代から三井物産香港支店とトンキン炭礦会社香港支店との取引関係が構築されており, 一手販売権を獲得したことが大きい。これが香港支店から仏領インドシナへの人員配置にも反映していた。(2)三菱商事においては現地在住の三菱退職者を人材活用し, 日本や香港からの出張者で補完していた。公式の人事録には表われていないため, 従来の研究では見過ごされていた部分である。主な商品に, 旭硝子とともに取扱った硅砂があり, 日本向け輸出に力を入れていた。 従来の研究では, 商社のアジア支店の中で仏領インドシナは規模が小さく継続的営業が確認できなかったが, 本稿では取扱品と人員配置からその活動を示すことができた。
著者
湯山 英子
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.365-385, 2011-11-25

本稿の目的は,1910年代から1940年代初めを対象に,仏領インドシナにおける対日漆輸出の展開を,現地の日本人商店の活動に焦点をあてて検討し,解明することにある。同時に,この時期のアジア域内,台湾,中国での漆貿易の担い手,および流通過程を明らかにする。これまでの研究では,戦間期における対日貿易の担い手の検討がなされていないまま,1940年以降の日本企業進出に関する研究が主流を占めてきたという背景がある。検討の結果,現地日本商は,1910年代から,本格的には1920年代はじめから日本向け漆輸出,あるいは輸出のための調査や営業活動に奔走し,1930年代には漆供給基地として仏領インドシナでの地歩を固めていったと考えられる。また,その背景および要因として,(1)日本での需要の変化による原料獲得の必要性,(2)日本商による仏領インドシナでの流通経路の掌握,(3)日中関係悪化による中国での流通構造の変化,(4)台湾での漆栽培と「国産化」の推進,この4点が確認できた。