著者
池田 幸代 大川 一郎
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 2012-03

本研究の目的は,保育者のストレス評価の特徴に注目し,保育者のストレッサーは職場や職務に対する認識が媒介することによって変化が生じ,その結果職務に対する精神状態に影響をおよぼすという構造仮説モデルを,保育士と幼稚園教諭という職種別に検討することである。具体的には保育士119名と幼稚園教諭114名を対象に質問紙調査を実施し,パス解析を行った。その結果,保育者の認識の媒介効果は部分的に証明された。保育者の認識のうち保育者効力感を規定するポジティブな効果がみられた媒介変数は,保育士・幼稚園教諭ともに「専門職としての誇り」「保護者・子どもとの信頼関係」であった。「職場の共通意識」は,保育士の場合はバーンアウトを低減させる効果が示されたが,幼稚園教諭の場合は媒介変数としての効果は何もみられなかった。よって,保育職一般にとっては職務における個人的なやりがいや満足感といった認識はストレス軽減に関与し,職場内のまとまりや共通意識は,保育士にとってはストレス軽減要因となるが,幼稚園教諭にとってはストレス評価に関与しないという現状が明らかになり,保育職のうち職種の違いによって独自のストレッサーおよびストレス関連要因の存在が示唆された。今後,これらの要因を調整することにより,保育者の精神的健康が守られることが期待され,ひいては子どもの健全な発達援助の一助になると考えられる。

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