著者
須賀 千絵
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-96, 2012

英国の自治体Wirralの公共図書館閉館問題に対し,2009年に,1964年公共図書館・博物館法に基づく中央政府の審問が実施された。本研究では,審問の過程を検証し,審問の制度の意義と課題について考察した。その結果,Wirralにおいては,審問によって図書館閉館の決定を撤回させることができ,緊急事態への対応という点で,一定の効果があったことが明らかとなった。同時に,課題として,第一に,審問は政治を超えた安定的制度ではないこと,第二に,問題を大臣に通報するにはロビー活動によるしかないことから,通報にあたっての市民の時間,労力,金銭的負担が大きいこと,第三に,適正な審問が実施できるかどうかは審問官個人の力量に左右される可能性があること,第四に,定期的なモニタリング等によって継続的に中央政府が介入しない限り,問題点を是正するという効果を持続させることはできないことを指摘した。

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