著者
須賀 千絵
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.579-584, 2009-12-01

英国では,1964年に,現行の公共図書館・博物館法(Public Libraries and Museums Act,1964)が成立した。その後,今日まで公共図書館に関わる法律に主だった変更はないが,中央と地方の行政制度や図書館サービスの内容には大きな変化があった。本稿では,これらの変化のうち,図書館行政における中央政府の役割の変容について述べる。最初に,1964年公共図書館・博物館法の内容を解説する。続いて図書館行政への中央政府の関与のあり方に応じて,1964年から現在までの45年間を4つの時期に区分し,それぞれの時期における主な図書館政策について論じる。
著者
須賀 千絵
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-96, 2012

英国の自治体Wirralの公共図書館閉館問題に対し,2009年に,1964年公共図書館・博物館法に基づく中央政府の審問が実施された。本研究では,審問の過程を検証し,審問の制度の意義と課題について考察した。その結果,Wirralにおいては,審問によって図書館閉館の決定を撤回させることができ,緊急事態への対応という点で,一定の効果があったことが明らかとなった。同時に,課題として,第一に,審問は政治を超えた安定的制度ではないこと,第二に,問題を大臣に通報するにはロビー活動によるしかないことから,通報にあたっての市民の時間,労力,金銭的負担が大きいこと,第三に,適正な審問が実施できるかどうかは審問官個人の力量に左右される可能性があること,第四に,定期的なモニタリング等によって継続的に中央政府が介入しない限り,問題点を是正するという効果を持続させることはできないことを指摘した。
著者
五十嵐 花織 須賀 千絵
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.232-246, 2011-09-01

2006年8〜10月に,日本の公共図書館5館において,レファレンスサービスを対象に覆面調査を試行した。調査方法の妥当性を検証するために,司書率が高い図書館は優れたレファレンスサービスを提供しているという想定のもとで,調査結果と司書率との関係を調べた。正答率,回答にかかった時間,図書館員の態度の3つの観点からサービスを評価した結果,特に重視されると考えた正答率について司書率との関係が認められた。さらに,試行の結果をもとに,具体的な調査方法の提案を行うと共に,残された課題について指摘した。
著者
田村 俊作 高山 智子 三輪 眞木子 池谷 のぞみ 越塚 美加 八巻 知香子 須賀 千絵
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公共図書館の医療・健康情報サービスを適切にデザインするための知見を得ることを目的に,医療・健康情報サービスの現状調査を行ない,アクションリサーチによりサービス普及を試行した。がん相談支援センターとの連携によるサービスには可能性があり,大規模図書館を中心にサービスは普及しはじめているが,実施自治体は公共図書館設置自治体の2割に達しておらず,普及に向けて多くの課題があること,特に公共図書館員に関連知識・技能の修得機会を提供する必要のあることが明確になった。
著者
須賀 千絵
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.384-389, 2007-08-01

本稿では,利用者の視点を導入した図書館評価を,利用者の意見を内部評価に反映させる「意見反映方式」,評価主体として参画した利用者等と図書館が協働で評価を行う「協働評価方式」,市民が独自の評価機構を作って評価を実施する「独立評価方式」に分類した。そのうえで具体的な事例が存在する「意見反映方式」「協働評価方式」の評価方法を概説した。「意見反映方式」の評価方法には,満足度評価,有効度評価,SERVQUAL評価がある。また「協働評価方式」の評価方法には,市民と専門家から構成される評価組織が公共図書館評価に参画する方法がある。合わせてそれぞれの方式の意義と問題点についてまとめた。