- 著者
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戸板 律子
- 出版者
- 日本笑い学会
- 雑誌
- 笑い学研究
- 巻号頁・発行日
- no.19, pp.32-45, 2012-07-21
『世界一おかしなシャンソン史』は、ユーモア・シャンソンのグループであるシャンソン・プリュス・ビフリュオレによる、シャンソンの歴史を題材にしたショウである。シャンソン史というスケールの大きなテーマが、いかにして笑いのあるエンタテインメントになっているのか。まずその演目を史実と対照させてみると、シャンソンの変遷の大きな流れをおさえながら、周知のトピックだけでなく興味深い細部にも光を当てていることがわかる。次に笑いがどのように組み込まれているかをみると、グループの持つ様々な音楽パロディの手法と幅広いレパートリー、並びにデビュー当初から積み重ねてきた、音楽と笑いを融合した舞台構成の工夫が活かされていることがわかる。こうして、出演者はメンバーの3人のみながらバラエティ豊かな舞台表現となっており、笑い・ユーモアによって、シャンソンというフランスが誇ることのできる文化を、教養主義でも懐古趣味でもなく再発見できるものとなっている。