- 著者
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小向 敦子
- 出版者
- 日本笑い学会
- 雑誌
- 笑い学研究
- 巻号頁・発行日
- no.19, pp.97-108, 2012-07-21
「ぽっくり死」や「ぴんぴんころり」は、シニア層を中心に用いられている造語である。同時に彼らにとっては、標語ともなっているようで、近年ぽっくり寺参りが流行し、ピンコロ商品が売り上げを伸ばしている。しかし百寿者が4万人を超える世界第1位の長寿王国である日本で、それこそ百年も長く生きた後に、ぽっくり・ころりと死ぬことが本当に本望なのだろうか。この方向を目指すことが、本当に正解なのだろうか。平均寿命が短い他国で天逝する人であれば、死にたくないのに死ぬのが精いっぱいで、仕方ない。だが「石の上」という名の「老年期」にも30年鎮座し、老いがいを享受した熟練シニアの死は、彼らと一緒にされるべきではない。では一体何がなされるべきなのか。世界王者の宿命でもあろうが、模倣することができるモデルのいない私たちに、手を差し伸べてくれたのは、やはりユーモアであった。ユーモアが逝き方の質を変える、その可能性を模索する。