著者
高橋 登 大伴 潔 中村 知靖
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.343-351, 2012-09-20

筆者らはこれまで,インターネットで利用可能な適応型言語能力検査(ATLAN)として,語彙,漢字の2つの検査を開発してきた。本研究ではその下位検査として新たに作成した文法・談話検査について,その特徴と妥当性を検討した。最初に本研究で測定しようとする文法・談話の能力について先行研究に基づき定義を行った。研究1では,この定義をもとに小学生を対象とする課題として8種類の問題タイプについて計67課題を作成,これを2つの版に分けて小学1〜3年生309名に実施した。また幼児を対象とする課題として12種類の問題タイプについて計67課題を作成,これを2つの版に分けて幼稚園児258名に実施した。項目特性曲線のデータとの当てはまりの程度を考慮し,最終的に128項目を項目プールとして選定し,文法・談話検査としてATLANに追加実装してインターネットを介してWebで利用できるようにした。次に研究2において,妥当性を検討するために,ATLAN語彙,文法・談話検査とLCスケール(大伴・林・橋本・池田・菅野,2008)を幼稚園児59名に実施した。ATLAN2検査を説明変数,LCスケール得点を目的変数とする重回帰分析を行った結果,2課題で目的変数の分散の48%が説明されることが示された。最後に,ATLAN文法・談話検査について残された課題について論じ,ATLANの今後の拡充方針について解説した。

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