- 著者
-
安彦 元
- 出版者
- 研究・イノベーション学会
- 雑誌
- 研究技術計画 (ISSN:09147020)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.29-39, 2012-09-20
- 参考文献数
- 12
本研究では,「権利形成過程における特許請求の範囲に対する意思決定が特許権侵害訴訟における判決と相関を持つ」という仮説をあくまで定量的に検証するため,独立請求項の出願から権利化に至るまでの格成分数(技術的範囲)の変動比率CLD率を介して数値化した。そして実際の特許法第104条の3が施行された後の5年間の裁判に焦点を当て,あくまでステップ数や動作数,条件数により技術的範囲の広狭が主に支配され,それが格成分数として現れ易い電気,機械分野を調査対象の中心に据えて実例分析を行った。その結果,1)敗訴(無効)は,勝訴と比較して,よりCLD率が高くなること,2)敗訴(逸脱)は,勝訴と比較してCLD率は大きな差が無かったが,ややCLD率が高くなること,が分かった。本研究を通じて,侵害訴訟の勝率を向上させる上であくまで権利形成過程における特許請求の範囲に対する意思決定の観点から一つの方向性を示したものであるが,知財高裁や最高裁の判決をも考慮に入れて分析を行うことで,また違った角度での考察もできると考えられる。