- 著者
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川野 佐江子
- 出版者
- 大阪樟蔭女子大学
- 雑誌
- 大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.147-158, 2013-01-31
本論文は、大相撲(財団法人日本相撲協会が挙行する本場所と呼ばれる相撲競技会)に出場できる力士たちの"よそおい"に着目することで、従来のヘゲモニックHegemonic な男性性「男らしさ」が今、どのような状況にあるのかを論じることが目的である。力士の"よそおい"とは、髷と着物を中心にした階級社会制度の視覚化である。それは、「全体」としての制度に従う力士の状況を説明するが、一方でその制度から覗く隙間に、力士の「個」としてのアイデンティティを表出したいという欲望を生じさせる場として捉えることが可能だ。そのように、"よそおい"の制度が、「全体」を意味するものから、それがゆえに「個」を表出させるものへと変容する状況を、従来の「男らしさ」がそれのシニフィエである〈マスキュリニティ〉へと変容することと重ねて論じていく。