著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.197-205, 2011-01-31

本論は、プロレスラーの身体を題材にして「男性身体」という概念をいかに捉えたらよいのか、という問いを検討していく研究ノートである。「男性身体」は、「近代パラダイム」あるいは「覇権的なものの可視化されたフォルム(姿)」という位置づけで捉えられる。 まず、プロレスラーの身体がいかに「男性身体」を表象しているかについて検討する。つまりレスラーの身体がいかに「理性」に訴求するように身体加工されているのかということに着目する。次にプロレスとは、二項対立構造や権威的ヒエラルキー制度の中で展開されているのだということを指摘する。続いて、プロレスのスペクタクル性について指摘し、「男性身体」との関係を述べる。最後にレスラーのアイデンティティについて触れ、それが「男性身体」を変容させる可能性をもつという仮説を立てて本論は閉じられる。
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.147-158, 2013-01-31

本論文は、大相撲(財団法人日本相撲協会が挙行する本場所と呼ばれる相撲競技会)に出場できる力士たちの"よそおい"に着目することで、従来のヘゲモニックHegemonic な男性性「男らしさ」が今、どのような状況にあるのかを論じることが目的である。力士の"よそおい"とは、髷と着物を中心にした階級社会制度の視覚化である。それは、「全体」としての制度に従う力士の状況を説明するが、一方でその制度から覗く隙間に、力士の「個」としてのアイデンティティを表出したいという欲望を生じさせる場として捉えることが可能だ。そのように、"よそおい"の制度が、「全体」を意味するものから、それがゆえに「個」を表出させるものへと変容する状況を、従来の「男らしさ」がそれのシニフィエである〈マスキュリニティ〉へと変容することと重ねて論じていく。
著者
大塚 裕子 伊藤 裕美 川野 佐江子 大村 陽 室町 泰徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.390, pp.73-78, 2010-01-18

本研究は,道路や鉄道の建設など大規模な都市交通プロジェクトに関する国際共同研究(Mega Projects in Transport and Development by OMEGA Centre)の日本プロジェクトの一部として進められている.大規模な都市交通プロジェクトに関わった多様な人々を対象に,プロジェクトに関する経験的なエピソードを得ることを目的としてインタビューを実施し,経験的なエピソードからプロジェクトに関する知見を取り出し,プロジェクトに関する新たな評価指標を作成することが目標である.知見の取り出しについては,テキストマイニング技術による自動的な抽出を最終的な目標としているが,本稿では自動抽出に向けて,収集したインタビューデータがどのような性質を有しているか,着目すべき言語表現や言語構造は何かについて基礎的な分析を行った.
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.125-136, 2012-01-31

本論の目的は、プロレスラーの身体装飾に着目することで、現代社会において「男性身体」がどのような状況におかれているのか、を見ることにある。そのことは、近代以降その覇権性を保ってきた男性中心主義が社会でどのような現状におかれているのか、を俯瞰することでもある。このことはジェンダー概念が、現代社会の構造を明らかにする上でどれほど有効性を保持しているのか、という一つの疑義を含んでいる。それはつまり、男性女性という二項対立を分析軸にした身体性の問題に対する疑義でもある。ジェンダー概念では分析しきれない身体性の在り様について、特に「男性身体」をテーマにして、論じていく。
著者
川野 佐江子 カワノ サエコ Saeko KAWANO
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.197-205, 2011-01-31

本論は、プロレスラーの身体を題材にして「男性身体」という概念をいかに捉えたらよいのか、という問いを検討していく研究ノートである。「男性身体」は、「近代パラダイム」あるいは「覇権的なものの可視化されたフォルム(姿)」という位置づけで捉えられる。 まず、プロレスラーの身体がいかに「男性身体」を表象しているかについて検討する。つまりレスラーの身体がいかに「理性」に訴求するように身体加工されているのかということに着目する。次にプロレスとは、二項対立構造や権威的ヒエラルキー制度の中で展開されているのだということを指摘する。続いて、プロレスのスペクタクル性について指摘し、「男性身体」との関係を述べる。最後にレスラーのアイデンティティについて触れ、それが「男性身体」を変容させる可能性をもつという仮説を立てて本論は閉じられる。
著者
川野 佐江子 カワノ サエコ Saeko KAWANO
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 = Research Bulletin of Osaka Shoin Women's University
巻号頁・発行日
vol.8, pp.137-144, 2018-01-31

「化粧学」とは何か。本論の目的は、 大阪樟蔭女子大学にて化粧が明確にカリキュラムかされて 10 年目にあた り、 新学問領域として提唱してきた「化粧学」について、 改めてその意義を確認してみようというものである。まず、 化粧を学問の俎上に挙げるために研究者はどのようなプランニングをしたのかを明らかにする。つぎに、 そのプラン の実践としての大阪樟蔭女子大学における化粧に関連するカリキュラムを時系列で追うことで、 化粧学設置までにど のような経緯があったのかを調査する。そして、 改めて化粧学が包括する学問領域についてその可能性を探る。最後 に、 化粧学が学問としてその根底に何を含んでいるのか、 近代知への疑義とともにあるポストモダンの思想について 依拠しながら論じる。また、 美が持つイデオロギー性に着目しつつ、人が美に翻弄されそれを求め続ける存在である ことを理解し、美が人々の生活といかに関連しているか、豊かににしているかを既存の学問領域を縦断横断しながら 検討していく必要性について述べる。
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究期間全体を通じて,研究目的①~③は,次のような成果を得ることができた.①力士たちは「相撲美」という様式美に自己を依拠させることで,アイデンティティを確立していたことが分かった.②現代の力士の「稽古」はトレーニングの意図を中心に展開されており,体脂肪率や栄養管理など筋肉を中心とした西欧的身体へとまなざしが移行していることが分かった.③主に横綱柏戸を例に考察した結果,「アイデンティティ確立への要請」や「剛健であること」が近代的男性性と結びつくことが議論できた.本研究では,相撲研究が現代社会の諸問題,とりわけ現代の男性が抱える問題にまで展開できることを示したことが,新たな成果としてあげられる.