著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-14, 2011-01-31

中世の大阪地域で活躍した武士団の実像を、河内水走氏と摂津渡辺党・渡辺氏について実証した。中世後期の武士団を検討するという第一の課題については、畿内型武士団としての水走氏や渡辺氏が、南北朝時代には南朝方や北朝方に帰属しながら、室町時代には幕府の守護領国体制に組み込まれていく過程を、あきらかにできた。水走氏と渡辺党を比較するという第二の課題については、畿内型武士団としての特徴に基本的な相違はないが、水走氏は枚岡神社の祀官として江戸時代も中河内の名族としての地位を保ち、渡辺氏は豊臣秀吉の大坂城が築かれた頃、渡辺の地を離れて奈良に去るという違いについて、地域の歴史の違いとして検討を加えた。中世の国家機構を構成する朝廷・官衙や権門寺社と幕府に奉仕したのが、畿内型武士団としての水走氏や渡辺党であった。水走氏や渡辺氏が水軍・武士団として交通や流通機能を担ったことが、中世を通じて活躍した独自の強さの理由であり、また、近世に武士身分として生き残れなかった理由でもある。
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.197-205, 2011-01-31

本論は、プロレスラーの身体を題材にして「男性身体」という概念をいかに捉えたらよいのか、という問いを検討していく研究ノートである。「男性身体」は、「近代パラダイム」あるいは「覇権的なものの可視化されたフォルム(姿)」という位置づけで捉えられる。 まず、プロレスラーの身体がいかに「男性身体」を表象しているかについて検討する。つまりレスラーの身体がいかに「理性」に訴求するように身体加工されているのかということに着目する。次にプロレスとは、二項対立構造や権威的ヒエラルキー制度の中で展開されているのだということを指摘する。続いて、プロレスのスペクタクル性について指摘し、「男性身体」との関係を述べる。最後にレスラーのアイデンティティについて触れ、それが「男性身体」を変容させる可能性をもつという仮説を立てて本論は閉じられる。
著者
保木 昌徳 横谷 早姫 瀧 奈津江 田中愉加利 濱田 佳奈
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.209-216, 2011-01-31

【目的】アスリート、男性、肥満女性、マウスを対象としたVAAM配合のヴァーム(R)(明治乳業株式会社)投与の研究では脂肪燃焼促進効果が報告されている。しかし、若い女性を対象とした検討はなされていないため、今回我々は女子大生におけるヴァーム(R)経口摂取による脂肪燃焼促進効果の検討を行った。【方法】ボランティア学生25名を対象にヴァーム(R)または対照飲料投与後30分に自転車エルゴメーターで持久性運動を負荷した。脂肪燃焼促進作用は呼気ガス分析器(ミナト医科学株式会社)で得られたV4 CO2、V4 O2より、脂肪由来のエネルギー消費量を算出(西の方法)し比較検討を行った。分析にはt検定を用いた。【結果】ヴァーム(R)摂取群と対照飲料摂取群を比較したところ脂肪由来のエネルギー消費量に目立った差は得られなかった。しかし、ヴァーム(R)摂取時、体脂肪率28.0%超(過多)の群において、18.0〜28.0%(標準)の群より脂肪由来のエネルギー消費量が有意に高値であった(P<0.05)。
著者
鈴木 朋子 山東 勤弥 Tomoko SUZUKI Kinya SANDO
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.253-263, 2016-01

本研究は、広くダイエット法として普及している低炭水化物ダイエット(Low Carbohydrate Diet: LCD)の 減量効果および安全性について検討することを目的とする。方法は、1)LCD の方法について概観し、2)LCD の体 重減少効果について報告した学術論文を収集し、文献的に検討した。その結果、LCD の特徴は、炭水化物(糖質)を 含む食品の摂取は制限するが、たんぱく質および脂質を主成分とする食品に対する制限は設けられていなかった。医 学系学術論文データベースを用いて検索し、21 論文を検討対象とした。体重減少効果は、1)観察期間が長いほど、 2)炭水化物熱量比が低いほど、高くなる傾向が観察された。また、3)Blackburn の体重減少の評価法を参照する と、約70%の研究で高度な体重減少が観察され、安全性への疑問が示唆された。LCD は、一般的に健康的な食事と して推奨される食事の熱量構成比と大きく異なること、糖尿病性腎症患者においては腎機能を悪化させる危険を伴う ことをはじめ、適正かつ注意喚起を促す情報をあわせて普及していくことの重要性が窺われる。Weight loss effects and safety of low carbohydrate diets(LCD), which are common in Japan, are examined. This literature review was conducted to reveal 1)features of the LCD methods, 2)factors that influence weight loss, and 3)safety of weight loss, with reference to Blackburn's weight loss clinical evaluation index. Twenty one LCD studies, whose subjects were healthy obese people, were selected for review from the academic medical research database. Most LCDs allow intake of high fat and high protein foods, rather than a strict regime of limiting carbohydrates. Weight loss appeared to be greater in studies with longer rather than with shorter observation periods. Also, the greater weight loss was observed, the carbohydrate to energy intake ratio became smaller. Rapid weight loss was observed in about 70% of the studies, which presents a risk of malnutrition. LCDs should be used with caution because 1)the energy ratios of LCDs diverge widely from the healthy diet that is recommended from Japanese dietary reference intakes, and 2)the risks of worsening renal function will increase if patients with diabetic nephropathy use LCDs. Warnings about possible negative effects of LCDs should be publicised to protect people's health.
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.147-158, 2013-01-31

本論文は、大相撲(財団法人日本相撲協会が挙行する本場所と呼ばれる相撲競技会)に出場できる力士たちの"よそおい"に着目することで、従来のヘゲモニックHegemonic な男性性「男らしさ」が今、どのような状況にあるのかを論じることが目的である。力士の"よそおい"とは、髷と着物を中心にした階級社会制度の視覚化である。それは、「全体」としての制度に従う力士の状況を説明するが、一方でその制度から覗く隙間に、力士の「個」としてのアイデンティティを表出したいという欲望を生じさせる場として捉えることが可能だ。そのように、"よそおい"の制度が、「全体」を意味するものから、それがゆえに「個」を表出させるものへと変容する状況を、従来の「男らしさ」がそれのシニフィエである〈マスキュリニティ〉へと変容することと重ねて論じていく。
著者
村井 尚子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.191-202, 2013-01-31

教育学研究においては、ケアと正義を対比させる文脈でケアリング論の検討が行われてきている。本稿では、ケアという語を実践的な行為として捉えるケアリング論とは方向性を違え、まずはケアという語の語源を辿った。ケアは元々は気にかかる、気がかりという意味合いを強くもつもので、ハイデガーの存在論の中心的概念であるSorgeを手がかりに考えることで、我々の生の有り様が照らし出されてくる。気がかりとしてのケアは、親であることの副作用ではなく、気にかけていること自体が親であるという生活そのものであると言える。言い換えれば、気がかりは親であることの原料であり、子どもの生へと自身の生を寄り添わせる接着剤の役割を果たす。子どもの側から見れば、ケアしてくれる=気にかけてくれる存在が、子どもが育っていくためには不可欠なのである。この気がかりは、親であるかぎりずっと続く慢性の病とも言える。つねに気にかけ続けることは、痛みを伴うものでもあるが、子どもを希望として経験することもまた、親であること、ケアすることの原料だとも言えるのである。
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.125-136, 2012-01-31

本論の目的は、プロレスラーの身体装飾に着目することで、現代社会において「男性身体」がどのような状況におかれているのか、を見ることにある。そのことは、近代以降その覇権性を保ってきた男性中心主義が社会でどのような現状におかれているのか、を俯瞰することでもある。このことはジェンダー概念が、現代社会の構造を明らかにする上でどれほど有効性を保持しているのか、という一つの疑義を含んでいる。それはつまり、男性女性という二項対立を分析軸にした身体性の問題に対する疑義でもある。ジェンダー概念では分析しきれない身体性の在り様について、特に「男性身体」をテーマにして、論じていく。
著者
末廣 祥二
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.231-242, 2013-01

2011年の東日本大震災、およびそれにともなって発生した原子力発電所の事故により、市民の科学的リテラシーの必要性が強く認識された。米国の科学的リテラシー教育はすべての市民のためのものという点が強調され、科学と社会の関係、人間活動としての科学という面を重視する。科学的リテラシーは科学についての理解を根幹とするものであるが、実際のところ科学に対する深い理解は、科学者を養成するための基礎訓練と、科学者としての実践によって獲得されるものである。一般市民に対する科学的リテラシーの教育においては、簡略化したカリキュラムでどのように科学を理解させるかということが最大の課題である。英国の21世紀科学のカリキュラムにおいては、説明のストーリーによって科学についての概念を与えるという考えがある。数年の大学生を対象とする科学的リテラシー教育の経験から、科学についての概念を学生にどのように与えることができるかという点について考察する。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-14, 2014-01-31

心理学は領域の広い学問である。そして、心理学という学問内での領域が細分化されているため、"心理学"という1つの学問体系としての基礎知識がどの範囲のものを指すのかは、極めて曖昧であると言える。心理学教育においては、こうした心理学領域での、特に初学者に対しての教育の"エッセンス"を用語の形で明らかにすることが必要である。本研究では、心理学テキストの索引をテキストデータとして扱い、そのデータベース化を行う。今回のデータでは2006年から2010年に刊行された35冊の心理学テキストを参照したパイロット・スタディの結果を報告した。
著者
坂田 浩之 佐久田祐子 奥田 亮 川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-37, 2013-01-31

大学生活が十分に機能するためには、大学生自身が大学生活に主体的にコミットし、充実感を感じることが重要であり、大学教育を向上させるためには、大学生活充実度を適切に測定し、大学生活充実度を規定する要因を明らかにすることが必要である。そこで本研究では、先行研究(奥田・川上・坂田・佐久田,2010a)の知見を踏まえて、1回生〜4回生を対象に大学生活充実度尺度、その修正版、および大学生活充実度尺度短縮版(SoULS-21)を実施し、大学生活充実度が学年進行に伴いどのように推移するのかについて、4年度分の1〜4回生の縦断データから分析を行なった。その結果、4回生時に充実度全般が最も高まることが明らかになり、奥田他(2010a)の知見の妥当性が支持された。また、学業に対する満足感については、コホートによって学年変化が異なることが明らかにされ、カリキュラムやプログラム、学科編成、あるいはコホートの特性によって影響される可能性が示唆された。
著者
村井 尚子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-83, 2012-01

ユトレヒト学派の現象学研究の流れを継承するオランダの教育学者トン・ベークマンは、天賦の才を備えた学者にのみ可能であった現象学の方法を教育学を学ぶ学生にも可能にするために、「現象学の民主化」という試みを行っていた。本稿では、「現象学の遂行」と名づけられたユトレヒト大学での授業において彼とその共同研究者らが実施していた現象学的な記述の分析の手順について、論文「現象学的記述の分析」を参照しながら考察する。また、その手順に従って筆者のゼミで実施した「暗闇の中での恐怖」に関する状況分析について報告を行う。彼の提起した現象学的記述の方法は、哲学的な厳密性に関しては議論の余地があるものの、教師を目指す学生や教育を研究するものが子どもを理解し行為を方向づけるための重要な方策となるものと考える。
著者
Hollander John 武田 雅子 岡村 眞紀子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.119-125, 2013-01

原著Rhyme's Reasonは、詩、特に英語の詩・韻文の法則、またその特質を、実際に詩を使って分かりやすく説明した書である。「詩」で「詩」を、「韻文」で「韻文」を説明するところが、本書の特色であり、面白くユニークなところである。そこがまた翻訳を困難にもしているのであるが。本稿は、「John Hollander 著Rhyme's Reason 翻訳〔1〕」(『大阪樟蔭女子大学研究紀要』第2巻)および「John Hollander 著Rhyme's Reason 翻訳〔2〕」(『大阪樟蔭女子大学 英語と文化』第2号)に続くものである。連による分類の続きとして、tercet(三行連)、quatrain(四行連)[その中に含まれるballad stanza(バラッド連)、commonmeasure(普通律)、long measure(讃美歌調)]、ottava rima(八行連詩)、sapphics(サッフォー連)、rhyme royal(帝王韻)、Spenserianstanza(スペンサー連)、terza rima(三行連詩)の定義付けのあと、sonnet(ソネット)の定義に入る。これは、韻の踏み方により、大きくイギリス形式とイタリア形式に分かれるが、他にtailed sonnet(有尾ソネット)などの変形があげられ、最後に音節で数えられるソネットで終わる。
著者
山崎 晃男
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.73-81, 2013-01-31

音楽と絵画が同時に提示された時の音楽と絵画の相互作用について検討した。実験1では、25名の参加者が15種類ずつの音楽刺激と絵画刺激に対する印象評定をおこない、できるだけ印象がばらけるとともに音楽と絵画の印象の強さが揃うようにという基準で、実験者が5種類ずつの音楽刺激と絵画刺激を選択した。実験2では、それらを組み合わせて提示し、実験1に参加した23名の参加者が各刺激の印象評定をおこなった。実験の結果、明暗の印象に関して、音楽と絵画の印象が大きく異なっているときに、音楽の印象に近づく方向に絵画の印象が変化していることが示された。音楽が絵画の印象に与える影響の大きさと絵画が音楽の印象に与える影響の大きさを分散分析によって比較した結果、明暗の印象に関しては音楽の影響の方が絵画の影響よりも有意に大きく、迫力の印象に関しては音楽の影響の方が絵画の影響よりも大きい傾向が見出された。
著者
中 周子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-12, 2013-01-31

田辺聖子が樟蔭女子専門学校時代に書いた「十七のころ」の自筆原稿が発見され全文が公開された。従来、自伝小説『しんこ細工の猿や雉』の中に紹介されて題名だけは知られていたが、所在も全文も不明であった作品である。本論文は「十七のころ」の本文を分析し、後の田辺文学に通じる手法や主題が見いだせることを指摘した。すなわち、田辺聖子の得意とするユーモアに満ちた軽妙洒脱な文体、大阪弁を駆使した巧みな会話による人物形象、田辺聖子が一貫して書き続けた戦後の女性の生き方という主題である。さらに、十七歳で終戦を迎えた体験から、十七歳が田辺聖子にとって特別な意味を持つこと、自伝小説『欲しがりません勝つまでは』の中に描かれた、自らの意思によって真の人生を歩み始める十七歳の少女の原型が、「十七のころ」の主人公であることを指摘した。「十七のころ」は田辺文学の原点と位置づけられる作品であることを論じた。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-53, 2013-01-31

言語の認知過程研究においては、視覚呈示された単語のみならず、それと正書法的に類似した単語である類似語(Coltheart, Davelaar, Jonasson, and Besner, 1977)も同時に活性化することが示唆されている。この問題の検討に際しては実験者は何らかの語彙基準を参照し、類似語数を操作することになる。しかし、こうした操作そのものの妥当性を受け入れる前に、辞書などの外在基準に基づく類似語数が実験参加者の心的辞書における類似語数と対応していることを確認しておく必要がある。本研究では、川上(1997)が報告している資料に基づく漢字二字熟語の類似語数と、漢字一文字を手がかりとして、実験参加者が産出可能な漢字二字熟語の数とが対応しているのか否かが吟味された。229名の実験参加者を対象とした実験の結果、川上(1997)に基づく類似語数と実験参加者が産出した漢字二字熟語の数との間に対応が認められた。この対応は、川上(1997)が参照した辞書である岩波広辞苑第四版と実験参加者が有する心的辞書との間に対応があることを示していると解釈された。
著者
川上 正浩 小野 菜摘 佐々木 美香 西尾 麻佑
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.95-103, 2012-01-31

本研究では、読み(音韻)から漢字(形態)への対応について、人間の反応に基づいたデータベースを構築することを目的とした。具体的には、仮名一文字で表記される特定の音韻(読み)から想起される漢字のバリエーションについて明らかにすることを目指した。実験参加者169 名を4 つの群に振り分け、それぞれの群に、仮名一文字で表される15 個の音韻を呈示した。30 秒の制限時間内に当該音韻から想起される漢字一文字のデータベースを作成した。集計の結果、本研究で対象とした仮名一文字のうち、もっとも多くの漢字が想起されたのは「か」(4.98)であり、もっとも少ない漢字が想起されたのは「ぬ」(0.80)であった。これは各実験参加者の想起漢字数であるが、想起された漢字のバリエーションについては、「か」(46)がもっとも多く、「せ」(3)がもっとも少なかった。
著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-14, 2013-01-31

鎌倉時代の堺荘の荘園領主はだれかを明らかにするのが、本稿の第一の課題である。前稿で摂津国堺荘の史料であることを明らかにした元亨3年(1323)7月の「堺御庄上下村目録帳」(海竜王寺文書)が、元亨3年5月11日の「西園寺実兼御教書」をうけて作成されたもので、このとき摂津国堺荘は、春日社祈祷料所として興福寺東北院覚円(実兼子息)が領家になったことを、初めて明らかにした。この2点が摂津国堺荘の史料で、豊田武以来の通説とは異なる。当時の和泉国堺荘(堺南荘)は、最勝光院領で領家は永福門院藤原鏱子(伏見天皇中宮、実兼女)で、西園寺実氏が亡父公経のために建立した天王寺遍照光院の寺役も勤めていた。第二に、南北朝時代の摂津国堺荘で現地代官の地位にあった渡辺薩摩入道宗徹を検討し、宗徹が摂津国住吉郡守護であった楠木正儀の守護代であったことから、楠木正成に遡って南北朝動乱期の摂津渡辺党(渡辺惣官家)の動向のなかで論じた。
著者
竹田 博信
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.190-196, 2011-01

「就職氷河期の再来か?」という記事が今年もマスコミで喧伝されている。昨年一年間の学生の就職活動を支援していて気付いた点が、視野が狭いために「情報」を取得できる情報が少なく、またその少ない情報に対してもリテラシーが低いために正しく活用できていないことだった。改めて企業側の視座からの意見を確認して、そこからの気づきについてまとめてみた。
著者
桶谷 弘美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.120-128, 2011-01-31

音楽を学ぶ者の前に立ちはだかる大きな障壁は、音楽理論を正確に把握することである。難解な専門用語が簡単に理解できないからだ。コード-・ネームや音程や音階あるいは五度圏等の解説には、通常専門用語を用いて説明が施されるが、これがスタート早々に躓きになってしまう。そこで、これらの専門用語をすべて数字に置き換えてみることにした。端的に言えば、半音ずつ数えていく方法で、習得困難な専門用語を理解させる試みである。例えば、長3度は5、短3度は4として、その数字から長3度とか短3度という用語を頭に入れさせるのである。また、五度圏の説明で、♯或いは♭が完全5度ずつ移動するというところを、8の移動に変えるだけで成り立つことを納得させることができる。この小論は、音楽を学ぶ者や初心者に刺激と学習意欲を燃やす動機と効果をもたらす指導法として論じたものである。この数字の代替理論は、筆者の独創によるものである。ゲームを楽しむような仕方で学べることが救いであり、本来の専門用語に徐々に慣れ親しむようになることが特筆すべき点である。