- 著者
-
市川 和昭
- 出版者
- 名古屋文理大学
- 雑誌
- 名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, pp.121-130, 2012-03-31
油脂は酸化的劣化や加熱劣化などにより風味および栄養価の低下を引き起こしやすく,さらには食中毒を引き起こすことがある.従ってフライ油などは劣化の程度を適切に判断して新油に交換することが必要である.油脂の加熱劣化の反応は複雑であり一つの分析手段のみでは評価することができないので,過酸化物価(PV)+カルボニル価(CV)+酸価(AV)指標によって加熱油を評価することを試みた.ヨーロッパ等で用いられている極性化合物量(PC%)と比較しながら評価した.PV+CV+AV指標とPC%は非常によく相関した.決定係数R2はエゴマ油0.99,大豆油0.95であった.廃棄基準とされる PC25% に相当する PV+CV+AV 指標は約60 meq/kg であった.CV 及び AV もそれぞれ PC% と比較的によく相関した.エゴマ油は自動酸化が速く進行したが,今回の加熱劣化試験では各分析値,PV+CV+AV 指標及び着色が大豆油やジアシルグリセロール油(DG 油)に比較して劣ることはなく,またエゴマ油中のトコフェロール量は大豆油やジアシルグリセロール油(DG油)に比較してゆっくり減少した.実際の厨房の処理油はモデル実験の加熱油に比較して AV が著しく高いものがあったが,これは揚げ種からの水分による加水分解の影響と思われる.この現場の油のプロットはモデル実験の加熱油の PV+CV+AV 指標と PC% のプロットの直線から外れた.