- 著者
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市川 和昭
西野 由記
谷口 奈美
- 出版者
- 名古屋文理大学
- 雑誌
- 名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.103-110, 2003-04-01
モノアシルグリセロール(MG)は,ジアシルグリセロール(DG)と共に食品用乳化剤や品質改良剤として広く使われている.一方,荏の油は構成脂肪酸としてα-リノレン酸が豊富な食用油で,特殊な生理作用が注目されている.本研究では,リパーゼ触媒を用いて荏の油などからグリセロリシスによりMGやDGを合成し,製パン時にそれらを添加してパンの老化を遅延する等の物性向上機能を付与することができないかを検討した.その結果MG,DGの生成量が最大となる合成条件を検討して,水の添加量がMG,DGの収量およびFAの生成量に著しく影響すること,また荏の油のグリセロリシスに対する活性は,位置特異性のあるRhizopus sp.(リパーゼF-AP-15,食品添加物酵素製剤)がよいことがわかった.得られた生成物を添加してパンを製造して食パンの品質(比容積,硬さ,官能評価)への影響を調査した.ショートニング+荏の油GL,ショートニング+オレイン酸MG,あるいはショートニング+DG (健康エコナ)を製パン用油脂として用いることにより,焙焼直後はしなやかで,2d放置後あまりかたくならない好ましい物性のパンを得ることができた.荏の油や荏の油のグリセロリシス生成物(荏の油GLと略記)を添加した場合,パンにわずかな荏の油臭がしたが,酸化防止剤としてカテキンを添加したパンでは,これらの臭気はなくなっていてパンの好ましい香りがした.