- 著者
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井上 治子
- 出版者
- 学校法人滝川学園 名古屋文理大学
- 雑誌
- 名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.43-49, 2013
本稿は,神奈川県逗子市池子米軍住宅建設反対運動,いわゆる「池子の森を守る運動」に関し,1986年から1991年にかけて実施された調査研究結果に基づき,1991年に執筆された未刊報告書に修正を加えたものの第一部分である.調査結果をアーカイブとして公開するとともに,日本社会における「新しい社会運動」の発生を現時点から再考することが本稿の目的である.調査全体は,成員間の連帯と参加動機の関係に焦点を当てることにより,運動の発生を明らかにすることを目指し実施された.収集されたデータは,1986年から1990年にかけて実施された参与観察および対面調査により得られた知見,1990年に実施された質問紙調査により得られたデータ,全調査期間中に得られた運動団体の会報・ビラ,成員と筆者との間の私信等である.考察は,当運動に関する先行研究と,資源動員論,および,「新しい社会運動」論の内から成員間の連帯や価値観をめぐる論点を中心として参照しつつ進められ,最終的に考察は運動におけるアイデンティティ志向のもたらす問題点へと導かれた.それらを検討し直し,当誌に順次投稿していく予定である。一連の調査の冒頭部分に当たる本稿では,紛争の経緯と運動の発生が,参与観察・対面調査と文献から得られた知見とによって再構成され,1980年代の日本における新しいタイプの運動の発生と発展,分裂と衰退の過程が明らかにされる.