著者
白勢 彩子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.41-50, 2004

本研究では,幼児期における単語アクセントの獲得過程と,それに影響を及ぼすものと考えられる,幼児が生育する環境に出現する語彙におけるアクセントについて,日本語の代表的な方言アクセントを対象とした比較研究を行なった.対象は共通語アクセント(東京方言),京都方言アクセント,鹿児島方言アクセントの3体系である.単語アクセントの発話実験を幼児に行なったところ,東京および京都方言アクセントとは異なって,鹿児島方言アクセントでは成人と異なるアクセントを生成する,すなわち誤りのアクセントを生成するとの結果であった.この結果は,幼児がアクセントを誤って獲得することがないという従来の見解が言語普遍的ではないことを示唆するものである.幼児を取り巻く環境のアクセント分布を調査したところ,東京方言および京都方言ではアクセントに偏りが見られる一方で,鹿児島方言ではアクセントに偏りが見られなかった.この調査結果と上記実験結果とを総合的に検討し,幼児の単語アクセント獲得過程を議論する.

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