著者
松崎 昇
出版者
上武大学
雑誌
上武大学経営情報学部紀要 (ISSN:09155929)
巻号頁・発行日
no.38, pp.25-50, 2013-12-28

現代世界経済は三つの本質的な特徴をもっている。第一にその歴史形式的な特徴は<資本の過剰化>にある。それは具体的には<貨幣の過剰、生産手段と労働力の過剰、商品の過剰>として現象する。いわば<カネ余り、キカイ余りとヒト余り、モノ余り>である。そしてこの四つの過剰は<利子率・利潤率・賃銀・価格>の低下低位現象をもたらす。第二にその地理形式的な特徴は<資本のグローバル化>にある。それは具体的には<先進諸国の苦難、新興諸国の伸長、資源諸国の主張、無産諸国の沈殿>として現象する。そしてそのような内部構造をもちつつも、世界経済はあくまでも<一体のものとして同調同時化し増幅する>運動を展開している。第三にその内容的な特徴は<資本の究極化>にある。これはいわゆるICT 革命のことであるが、その核心はネットワーク・コンピューティングによる人の思考記憶機能の代替増強にある。いわば<TMT(Thinking Memory Technology)革命>である。これにより生産工程が極度に<標準化・簡易化・省力化>されてきている。都合、資本が<余り、広まり、極まってきている>わけである。そして以上三つの基本的な特徴を総合するならば、概して、先進諸国には資金や設備や製品が溢れており、途上諸国には人手が溢れている。とりわけ先進諸国から溢れ出た膨大な資金が外資として新興諸国に滔々と流れ込み、現地の低賃銀労働と結び付いて安価品の大量生産を生み出すことになった。これを技術実体的に捉え直すならば、TMT(ICT)革命がこの生産拠点の世界的な移動をいとも簡単に実現してしまった。これに対して新興諸国における旺盛な需要などにより、自然を基盤とする鉱産物や農産物等は不足気味となり、同価格は上昇高値傾向を示す。以上のゆえに、特に、これまで名実ともに先導主導的な地位にあった先進諸国の製造業界に、<製品価格の低下安値傾向と原燃料価格の上昇高値傾向との挟撃による利幅の縮減>という大いなる難問が降りかかってきている。

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CiNii 論文 -  現代世界経済における資本の過剰化・グローバル化・究極化について https://t.co/5dtMSXJ8uV #CiNii
@BeDai https://t.co/efWTxfsBVZ これぐらいしか見つけられませんでした。

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