- 著者
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鈴木 潤
姜 娟
- 出版者
- 研究・イノベーション学会
- 雑誌
- 研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.3, pp.195-208, 2012
- 参考文献数
- 15
近年,「グリーン・イノベーション」に対する重視と重点投資は,世界的な潮流となっている。しかし真に有効な関連政策や企業戦略などを検討するためには,従来言われてきた「日本の環境技術は世界一である」という通説を盲目的に引用することは慎むべきであり,今一度冷静に各種の環境関連の「コア技術」とそれらをサポートする「近隣技術」を俯瞰し,日本企業の技術競争力の国際的位置づけをエビデンスに基づいて明らかにすることが必要であると考えられる。本論文では,PATSTATを用い,IPCコードの「共起」に基づいて,より科学的かつ合理的な環境技術の定義法を提示するとともに,各技術分野の「近隣技術」を同定し,分析の視野に加えた。さらに,企業が自国の国内に多くの特許を出願するという"home country bias"を考慮したうえで,新たに定義された個々の技術領域の「コア技術」及び「近隣技術」における各国の国際特許出願数を集計し,国単位のマクロレベルで,各技術分野における日本の国際競争力の実像の把握を試みた。これらの分析の結果,環境技術のほとんどの分野において世界で最も高い技術競争力を有するのはほぼ例外なく米国とドイツであり,日本はいくつかの分野でトップではあるものの,圧倒的とは言えないという事実が明らかになった。さらに,特定の分野ではアジアの新興国による追い上げを受けている。少なくとも現時点で日本が「世界一の環境大国」であるとするのは幻想であるかもしれない。