- 著者
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姜 娟
- 出版者
- 研究・イノベーション学会
- 雑誌
- 研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.3, pp.267-287, 2009-02-23 (Released:2017-10-21)
- 参考文献数
- 115
21世紀に入って,世界中で「イノベーション」の言葉を冠した,各国政府による長期戦略が次々と打ち出されている。そうした長期戦略は時代変化の挑戦に対する意識的な応答といえるが,今日においては,「イノベーション」の用語が最も使用頻度の高い政策常套語になっている。しかし,「イノベーション政策」の概念の意味自体が,時を経て,変化してきている。本論考は,「イノベーション政策」とはどのような性格をもった政策的対応であるか,また「イノベーション政策」におけるイノベーションとは如何なることであるかを,今日の段階で改めて見極めることが重要であるという想定に立っている。その考察のためには,「イノベーション政策」の来歴,その後の展開,そして現在の到達点を跡づけてみることが必要であり,有用である。本稿においては,その発足時から現時点にいたるまでのOECDにおける関連領域の政策研究や論議を取り上げ,イノベーション政策の展開を学習過程として捉え,そこにおける政策ニーズと知的努力の間,政策アイディアと理論的,経験的研究の間の共進化を解明する。