著者
三浦 壮
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.499-522, 2013-02-25

本稿は,戦間期宇部地域の工業化を検討することで,近代日本における地方工業化の特質を,主に鉱業資本家の投資活動から解明するものである。宇部地域の炭鉱および製造業の出資者はその多くが福原家の家臣団につながる家々であり,地域の共有財産である石炭鉱業で得られた利益金を再投資するよう,婚姻関係や,家同士の結びつきを利用した株式の所有を行っていた。投資動機としては,地域社会による地下資源の共有意識と地縁・血縁関係を基底とした,各鉱業資本家の製造業への投資に対する「連帯的強制」があった。新しい事業の拡大と利潤獲得は宇部社会の発展と同義の概念であり,地域社会への「貢献意欲」も重要な要因であった。鉱業資本家の所得構造を実証した結果,地元株式に集中して投資をしていたこと,地元株が中央株よりも高い利回りを維持し,特に石炭鉱業の利回りと利益総額は高いものであり,地域工業化の原資となっていたことが明確となった。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

@mikao_2009 ちなみに興味あるのはこれ http://t.co/z1j4RXbSRk とかこれ http://t.co/iUpNLrXBju です

収集済み URL リスト