著者
新藤 透
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-16, 2013

選書論の研究は,論文や研究書が数多く刊行され学界が注目するテーマとなっている。しかし発表される研究のほとんどが戦後,特に1970年代以降の議論を取り上げており,それ以前を含めての歴史的な研究が見落とされている感があった。本稿ではこのような認識に立ち戦前期,特に明治時代に刊行された図書館学や隣接分野の通俗教育書の図書や論文から選書に関する記述を摘出し,当時どのよう意見があったのか明らかにすることを目的とした。検討の結果,図書館学書は比較的利用者の立場を考慮しての選書を心懸けるべきとの認識が目立つ記述が多かったが,通俗教育書では国民を「良書」によって「良い」方向に導くべきとの見解を強調している書籍が多かった。このように明治期の選書論とひとくちにいっても多様な議論があったことが明らかになった。

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