著者
新野 直哉
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー = NINJAL project review (ISSN:21850100)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.136-143, 2014-06

浅野(1935)には「「全然このお菓子好きだわ」などと云はれたら,ほとほと当惑して了ふであらう。」という一節がある。ここで「ほとほと当惑して了ふ」原因が,"全然"が"好きだ"という肯定を伴っていることであるとすれば,今日まで続く「"全然"+肯定」を「誤用」視する規範意識の発生は戦前に遡れることになる。しかし,浅野(1935)さらにそれに先立つ浅野(1933)を詳細に調査した結果,浅野(1935)で"全然"の正誤を判断する基準は,否定を伴うか肯定を伴うかではなく,あくまで「社会性の有無」,すなわち〈完全に。何から何まで〉という本来の「意味」「言語内容」で使われているか否か,ということであり,したがって問題の記述は,「"全然"+肯定」を「誤用」視する言語規範意識の現れと考えるべきではない,という結論にいたった。

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