著者
新野 直哉 橋本 行洋 梅林 博人 島田 泰子 鳴海 伸一
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

近現代の日本語における新語・新用法の事例に関する記述的研究とそれに関する言語規範意識の研究を行った論文の発表、従来学界で注目されてこなかった資料の紹介、さらに中国で開催の国際シンポジウムで計3回の研究発表・招待講演を行った。そして、メンバー全員による共同発表として、「代用字表記語」(「当用漢字表」にない字を使う漢字語の書き換えにより、新たに生じた漢字語)に関する発表を『日本語学会』で行い、それに関連する論文を計3件発表した。また、最終年度末には紙媒体(非売品)の「研究成果報告書」を作成した。
著者
新野 直哉
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー = NINJAL project review (ISSN:21850100)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.136-143, 2014-06

浅野(1935)には「「全然このお菓子好きだわ」などと云はれたら,ほとほと当惑して了ふであらう。」という一節がある。ここで「ほとほと当惑して了ふ」原因が,"全然"が"好きだ"という肯定を伴っていることであるとすれば,今日まで続く「"全然"+肯定」を「誤用」視する規範意識の発生は戦前に遡れることになる。しかし,浅野(1935)さらにそれに先立つ浅野(1933)を詳細に調査した結果,浅野(1935)で"全然"の正誤を判断する基準は,否定を伴うか肯定を伴うかではなく,あくまで「社会性の有無」,すなわち〈完全に。何から何まで〉という本来の「意味」「言語内容」で使われているか否か,ということであり,したがって問題の記述は,「"全然"+肯定」を「誤用」視する言語規範意識の現れと考えるべきではない,という結論にいたった。