著者
羽山 裕子
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 : 日本教育方法学会紀要 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.59-69, 2012-03-31

本稿では,2004年の障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act)改訂以降にアメリカ合衆国において普及した,学習障害児支援システムであるRTIに焦点を当て,RTI登場以前の論点も視野に入れつつ,その意義と課題を考察した。RTI以前に学習障害児診断の中心であったディスクレパンシー・アプローチは,診断過程におけるバイアスの影響や,早期の診断が不可能であることなどが問題視されていた。そこで新たに提唱されたRTIにおいては,徐々に専門性・個別性の高まる複数の層による指導を行い,指導を経ても学力の回復しない児童が学習障害児であると定められた。そこでは,学力の回復は,カリキュラムに基づく測定(CBM)のデータに基づいて下された。検討の結果,RTIは従来の診断方法ディスクレパンシー・アプローチの問題点を概ね乗り越えており,有効な方法であると言えた。しかし一方で,心理検査を用いないことによる不正確な診断を行ってしまう可能性や指導の画一化を招く可能性を批判されていた。このような批判の妥当性と克服可能性について考察し,心理検査の使用はRTIにおいても否定されておらず,むしろ読み書きスキルの検査を診断過程に組み込むか否かが批判者の主張との相違点であること,指導の画一化については,第一層においてその危険性が否定できないことを指摘した。

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@akinaln @kenichi_ohkubo 日本の書誌を追って限り、RTIはLD関係から出てきて( http://t.co/Eb8m2A3ArS http://t.co/IHk8nubCGk)、PBSは 応用行動分析・メタ分析や行動アセスメントとかで研究が発展していった感。

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