著者
羽山 裕子
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.411-423, 2012-04-27

In 2001, the LD summit was held in Washington D.C., at which the traditional diagnosis method of LD, the discrepancy approach, was criticized. It was suggested that the discrepancy approach was inaccurate, and information drawn from the discrepancy approach was not useful to develop an educational plan. However, these criticisms are not necessarily true for the original concept of the discrepancy approach. This paper addresses the original concept of the discrepancy approach. Bateman suggested that the measurement of intelligence-achievement discrepancy was the first step of LD diagnosis, and the second step, examination of cognitive characteristics and skills, had to follow the measurement of discrepancy. In the second step, ITPA(Illinois Test of Psycholinguistic Abilities) was often used. However, the first step was overemphasized when the discrepancy approach was widely adopted. This is because accurate judgment of LD was focused to allow the proper use of special education budget, and the decline of ITPA led to a decline in the second step, which led to overemphasis on the first step. This study yielded a number of insights regarding LD diagnosis. First, intelligence-achievement discrepancy represents only a limited part of LD diagnosis, and more particular measurement of individual ability must follow that. Second, a method is required to detect children with LD. Without such a method, the discrepancy approach cannot work adequately.
著者
羽山 裕子 樫村 芳記 阪本 大輔 中村 ゆり
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2012-01-31

ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'を用い,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で1-methylcyclopropene(1-MCP)を処理した場合の鮮度保持効果について検討した。リボン型の1-MCP製剤は,水に溶解させて1-MCPを発生させる粉末型の製剤に比べて1-MCPの発生速度が遅く,規定量の1-MCPを発生するまでの所要時間は6時間であった。また,MA包装用段ボール箱内でリボン型製剤を用いて1-MCPを発生させた場合,箱内の1-MCPの濃度は最大でも規定量の66%であり,規定量の50%以上の濃度を保持した時間は4時間に満たないものと推測された。一方,ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'に対する1-MCPの処理効果は,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で処理しても,果肉硬度の低下,地色の黄化,pHの上昇が顕著に抑制され,粉末型製剤を用いて気密性容器内で処理した場合とほぼ同等の高い鮮度保持効果が得られた。本方法を用いれば,処理庫等の設備がなくても簡便に1-MCP処理できることから,個人出荷等の小規模な経営体においても利用しやすいより実用的な処理方法として期待できる。
著者
羽山 裕子
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 : 日本教育方法学会紀要 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.59-69, 2012-03-31

本稿では,2004年の障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act)改訂以降にアメリカ合衆国において普及した,学習障害児支援システムであるRTIに焦点を当て,RTI登場以前の論点も視野に入れつつ,その意義と課題を考察した。RTI以前に学習障害児診断の中心であったディスクレパンシー・アプローチは,診断過程におけるバイアスの影響や,早期の診断が不可能であることなどが問題視されていた。そこで新たに提唱されたRTIにおいては,徐々に専門性・個別性の高まる複数の層による指導を行い,指導を経ても学力の回復しない児童が学習障害児であると定められた。そこでは,学力の回復は,カリキュラムに基づく測定(CBM)のデータに基づいて下された。検討の結果,RTIは従来の診断方法ディスクレパンシー・アプローチの問題点を概ね乗り越えており,有効な方法であると言えた。しかし一方で,心理検査を用いないことによる不正確な診断を行ってしまう可能性や指導の画一化を招く可能性を批判されていた。このような批判の妥当性と克服可能性について考察し,心理検査の使用はRTIにおいても否定されておらず,むしろ読み書きスキルの検査を診断過程に組み込むか否かが批判者の主張との相違点であること,指導の画一化については,第一層においてその危険性が否定できないことを指摘した。
著者
伊東 明子 羽山 裕子 樫村 芳記
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.253-261, 2003-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
5

花芽形成における糖および糖代謝の影響を明らかにするため,ニホンナシ'幸水'の短果枝頂芽に対し,5月24日から9月2日にかけ,時期をずらして3週間ごとに遮光処理(光透過率24%)を行い,芽における炭水化物含量(フラクトース,グルコース,ソルビトール,スクロース,デンプン)およびソルビトール異化酵素[NAD依存型ソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH),NADP依存型ソルビトール脱水素酵素(NADP-SDH)]とスクロース異化酵素[スクロース合成酵素(SS),酸性インベルターゼ(AI)]の活性を測定した.5月24日から7月28日にかけて行った遮光は,芽におけるフラクトース,グルコースおよびソルビトールの含量を低下させると同時に,遮光期間中の芽の新鮮重増加を抑制したが,それ以降の時期(7月28日から9月2日)の遮光は,糖含量・芽の重量のいずれにも影響しなかった.また,遮光時期により,NAD-SDH,NADP-SDH,AI(遊離型)およびSSの活性が増加した一方,AI(膜結合型)活性の減少が認められた.芽の成長速度は,芽のフラクトース,グルコース,ソルビトール含量とそれぞれ正の相関を示した.また,ソルビトール含量は全SDH(NAD-SDH+NADP-SDH)活性およびAI(遊離型)と,グルコース含量はNADP-SDH活性とそれぞれ負の相関が認められた.以上より,炭水化物の供給が制限されている状態では,糖含量が芽の成長の制限要因になると考えられた.また,遮光により芽の糖異化活性が増加したのは,これにより,芽が同化産物を取り込む力(シンク力)を増加させるためでないかと考えられた.糖含量の低下がシグナルとなり,芽における糖異化活性の増加を誘導している可能性が示唆された.
著者
羽山 裕子 阪本 大輔 山根 崇嘉 三谷 宣仁 杉山 洋行 草塲 新之助
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.55-61, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
33

早期多収で機械化にも適応できるTaturaトレリス樹形を参考にしたV字仕立てのニホンナシ ‘豊水’ において,主枝数および着果量が初期収量および果実品質に及ぼす影響を明らかにした.2本主枝および4本主枝は定植3年目に,6本主枝は定植4年目に樹冠が完成し,いずれの主枝数においても主枝当たり12果を着果させることで定植3年目には3 t・10 a–1以上の収量が得られた.収量は着果量が多いほど多かったが,果実品質は着果量が多いほど果実が小さく,糖度が低くなる傾向であった.また,果実重はいずれの主枝数・着果量区においても平棚仕立ての同樹齢樹や成木樹に比べて小さくなり,糖度は中着果区(主枝当たり12果)で平棚仕立ての成木樹と同等であった.着果位置については,高い位置の果実で収穫が早くなり,果実が小さい傾向であった.定植5年目までのV字仕立てのニホンナシ ‘豊水’ について検討した結果,早期の収量性と果実品質の観点から,主枝数は4本主枝,着果量は主枝当たり12果程度が適していると考えられた.
著者
島田 武彦 白鳥 利治 羽山 裕子 西村 幸一 山口 正己 吉田 雅夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.984-986, 1999-09-15
被引用文献数
1

RAPD (Random amplified polymorphic DNA)法により, 56品種・系統のオウトウ・サクラの類縁関係を検討した.クラスター分析の結果, 供試材料は大きくオウトウ品種群, サクラ品種群に分かれ, 両者は遺伝的に類似性が低いことが確かめられた.中国オウトウ, Lithocerasus植物は日本在来のサクラと比較的類似性が低いことが確かめられた.
著者
羽山 裕子 三谷 宣仁 山根 崇嘉 井上 博道 草塲 新之助
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.79-87, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 9

ニホンナシ ‘あきづき’ および ‘王秋’ の果実に生じるコルク状果肉障害の発生状況について,果実を5 mm厚に薄くスライスして詳細に調査を行い,成熟期や果実品質との関係を解析するとともに,GA処理の影響について調査した.両品種ともにコルクの発生が認められ,‘あきづき’は成熟の遅い果実に発生が多かった.本試験では,‘王秋’は‘あきづき’ほど成熟時期による違いは明確ではなかった.一方,両品種ともに果実重の大きい果実で発生が多く,特に‘あきづき’では大きい果実ほどコルクの個数が増加し,大きいコルクの発生も多くなった.コルクの発生位置は,果実全体に分布していたが,赤道面よりややこうあ部側に最も多く観察された.GA処理は,両品種ともにコルクの発生個数を有意に増加させ,障害程度を重症化させた.ただし,コルクの発生果率には影響を及ぼさなかった.