著者
齋藤 翔太朗
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.235-252, 2013

20世紀初頭のイギリスにおいて入国管理の政策基調は「開放」から「規制」へと一転したのであり,1905年外国人法の制定は移民政策史上の画期であった。本稿は,19世紀末から20世紀初頭にかけての外国人の流入と「外国人問題」の発生を検討することによって,1905年外国人法の政策意図,すなわち移民規制という「国家介入」を肯定する政策論理を解明することを課題とする。19世紀末以降,東欧出身の困窮外国人が大量に流入し,ロンドンのイースト・エンドに集中したことで排外的世論が高揚した。このような外国人の増加は既存の社会問題と重複する苦汁労働,過密人口,困窮,犯罪を悪化させた。移民規制運動では関税改革運動とともに国内労働者の雇用と生活を外国人から保護することが意図された。そして「好ましからぬ移民」を規制する1905年外国人法が制定されたのである。したがって本稿は,「外国人問題」の発生と1905年外国人法の制定が,社会問題に対する関心と自由貿易に対する懐疑によって自由主義が変容し,「国家介入」が肯定されつつあった当時の時代状況のなかに位置付けられると結論する。

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