- 著者
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河西 秀哉
- 出版者
- 神戸女学院大学
- 雑誌
- 論集 (ISSN:03891658)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.75-91, 2013-06
本稿が明らかにするのは、初期のうたごえ運動の活動実態である。うたごえ運動は、1948年に関鑑子(せきあきこ)によって、中央合唱団が結成されたことにより始まった。1953年に「第1回日本のうたごえ祭典」が開催され、その後、全国に急速に広まっていく。中央合唱団は共産党系の青年組織である日本共産青年同盟の音楽部門として結成されたことからもわかるように、共産党の影響を大きく受けていた。しかしうたごえ運動は共産党の影響下にあったわけではなく、社会の動向に大きく影響を受け、歌を通して平和を追求する運動を行っていた。これまで、うたごえ運動の研究はほとんど行われてこなかったが、近年になって急速になされるようになってきた。しかし、一次史料がほとんど検討されていないこと、初期の動向がほとんどわからないことなどの問題が残っている。そこで本稿は、中央合唱団の機関誌『うたごえ』の分析を通じて、1940年代後半から1950年代初頭にかけてのうたごえ運動の実態の解明を行った。その結果、①みんなで歌うという行為に活動の重点を置いていたこと、②平和を追求するような思想を持ち、そのような歌を歌っていたこと、③ロシア音楽や日本民謡を特にレパートリーとしていたこと、などが明らかになった。