- 著者
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福田 智子
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 社会科学 (ISSN:04196759)
- 巻号頁・発行日
- vol.101, pp.19-37, 2014-02
『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した、我が国初の類題和歌集である。古来、兼明親王や源順が編者に想定されており、貞元・天元年間(九七六〜九八二)頃の成立かと考えられている。作歌の手引き書を意図した歌集であるが、和歌のみならず、『源氏物語』をはじめとする物語などの文学作品にも、少なからぬ影響を与えたと見られる。収載歌には、『万葉集』『古今和歌集』『後撰和歌集』や私家集・歌合など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌も多く、それらの歌数は、収載歌の約四分の一を占める。本稿では、それらの出典未詳歌のうち、第六帖の「芹」から「青葛」までの題に配されている歌、九首について注釈を施し、表現のあり方を考察する。なお、底本は、『新編国歌大観』の底本である書陵部蔵桂宮本を用い、江戸期の流布本である寛文九年(一六六九)版本を含めた九本の伝本を視野に入れた本文異同を示す。