- 著者
-
磯村 尚子
殿岡 裕樹
- 出版者
- 沖縄工業高等専門学校
- 雑誌
- 独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校紀要 (ISSN:1881722X)
- 巻号頁・発行日
- no.8, pp.1-9, 2014-03
高等教育の現場において,バイオテクノロジーの有用性と社会的な影響を学ぶため,遺伝子組換え技術を活用した実験が広く行われている。その実施に当たってはカルタヘナ法に則った厳しいルールが定められるが,カルタヘナ法は,生物多様性条約(CBD)の一部であり,組換え生物の拡散防止は生物多様性の保護という大きな国際的合意に包含される考え方である。そこで本稿では,生物多様性条約の目指す3つのゴール,すなわち1.生物多様性の保護,2.生物多様性の要素の持続的な利用,3.公正で衡平な利益配分,についてこれまでの議論をふまえて全体を俯瞰し,研究や教育上重要と思われる視点と論点を述べる。生物多様性がわれわれ人類にとってかけがえのない財産であるという考え方(エコロジー),人間生活と生物多様性とを両立させるためのマネジメントの観点(ポリシー),更には生物多様性から生じる利益をどの様に共有するかといった論点(エコノミー)のそれぞれについて,近年の動向を紹介し,全体把握の一助としたい。また遺伝資源をめぐるいわゆる南北問題について,利用国と保有国の中間に位置する沖縄のポテンシャルについても簡単に述べる。