著者
熊谷 卓
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-80, 2013-04

国際テロリズムに対する対応として国際テロリズム自体を規制対象とする条約によるテロ行為者の刑事責任の追求がある。かかる条約の中核的な規定が、犯行後自国領域内でテロ事件の被疑者を発見した国が、被疑者を他国に引き渡さないかぎり、訴追のために事件を権限ある当局に付託することを求める規定(「引渡しまたは訴追(aut dedere,aut judicare)」)である。本稿では結論として、拷問禁止委員会(CAT)および国際司法裁判所(ICJ)における先例をふまえ、かかる規定のありうる解釈として、被疑者所在国は引渡しを求める従前の請求に関係なく権限ある当局に事件を付託することが求められること、その意味で引渡しに優先順位はおかれておらず、引渡しと訴追の関係は独立した関係にあること、また、引渡しの請求を受けた場合、かかる請求を受け入れることで訴追の義務から自己を解放することは許容されること、を導き出している。

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