著者
苅部 恒徳
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.9-16, 2007-05-30

古英語叙事詩『ベーオウルフ』は8世紀中ごろイングランドで成立したと見られる、北欧を舞台に英雄ベーオウルフの生涯を物語った、ヨーロッパ語での最初の叙事詩である。前半は、今はなきイェーアタス国の若き英雄ベーオウルフが隣掴デネ(デンマーク)の宮廷を12年間悩まし続ける怪物グレンデル退治に向かい、これを首尾よく退治し、わが子の復讐に来襲し廷臣を連れ去った母親も、その湖底の棲家に赴いて退治する。(後半は50年後、故国の王となったベーオウルフが国土を焼き払う火龍と対決し、若武者の助太刀でこれを退治するも、自らも致命傷を負って死ぬ。)本論の「フロースガール王の説教」は前半のクライマックスをなすもので、怪物の湖底の棲家からグレンデルの首級と、彼らの毒血で刃が熔けてなくなった、巨人の作なる刀の柄を戦勝記念に持ち帰ったベーオウルフに、彼を迎えたデンマークの老賢王のフロースガールが垂れる説教の意図を以下に考察した。重々しい述べ方と内容によって、王としての威厳を保つためのものであったとの結論に達した。
著者
神長 英輔
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-14, 2012-04

1950年代,全国各地で若者の合唱サークルが組織された.1940年代末に起こったこの運動はうたごえ運動と呼ばれた.うたごえ運動は文化運動,労働運動,反核平和運動と連携し,1950年代半ばに最盛期を迎えた.しかし,早くも1960年代前半には人気を失った.この運動はどのようにして同時代の若者の心をとらえたのか.またなぜ若者の心はうたごえ運動から離れていったのか.この論文は進化論の観点から文化を理解するミーム学の知見を用いてこの疑問に答える. ミームとは模倣であり,遺伝子に似た「文化の自己複製子」として理解される.うたごえ運動とは「正しく,美しく歌え」などの指示のミーム,「歌の力によって大衆を組織し,世を動かす」という物語のミーム,ミームとしての歌からなるミーム複合体である.うたごえ運動が拡大し,一転して衰えた過程はこれらのミームが複製された(されなくなった)過程として説明できる.
著者
熊谷 卓
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-80, 2013-04

国際テロリズムに対する対応として国際テロリズム自体を規制対象とする条約によるテロ行為者の刑事責任の追求がある。かかる条約の中核的な規定が、犯行後自国領域内でテロ事件の被疑者を発見した国が、被疑者を他国に引き渡さないかぎり、訴追のために事件を権限ある当局に付託することを求める規定(「引渡しまたは訴追(aut dedere,aut judicare)」)である。本稿では結論として、拷問禁止委員会(CAT)および国際司法裁判所(ICJ)における先例をふまえ、かかる規定のありうる解釈として、被疑者所在国は引渡しを求める従前の請求に関係なく権限ある当局に事件を付託することが求められること、その意味で引渡しに優先順位はおかれておらず、引渡しと訴追の関係は独立した関係にあること、また、引渡しの請求を受けた場合、かかる請求を受け入れることで訴追の義務から自己を解放することは許容されること、を導き出している。
著者
藤田 晴啓
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-91, 2015-04-01

インドネシア・ボゴール市における最近の調査では、家庭からの廃食油は生活排水あるいは土壌に投棄され、水系・土壌汚染等の環境被害を引き起すばかりでなく、温室効果ガス排出の増加をもたらしている。日本の家庭からの廃食油は年間10 万トンでるといわれ、その大半は燃焼ゴミとして廃棄され、再利用されるのは1 割にも満たない。新潟市およびボゴール市において実施されている廃食油再生化事業の比較検討を行った。回収される廃食油量や再生エネルギーの60%しか公用車両稼働に利用されていないこと等、両者には共通点が多いことが明らかとなった。食用油の温室効果ガス排出量としてのライフサイクルインパクトを、実際の製造所データや報告されているデータを使用して推定した。廃食油の排水・土壌の投棄、あるいは完全消費と比較した再生化の場合の環境的有利性は、経済的あるいは技術的な制約により、必ずしも再生活動を助長するものではないことが明らかとなった。日本における高い人件費による制約よりも、ボゴール市での技術的な制約は比較的安易に解決できるであろう。
著者
藤田 晴啓
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-38, 2014-04

クスコ、ヴィルカノタ川沿いの聖なる谷からマチュ・ピチュ遺跡にかけてのインカ時代遺跡群の調査を行い、遺跡群の地理的特徴、マチュ・ピチュ遺跡の立地、都市建築の歴史的背景、遺跡の劣化状況および保存施策について報告した。マチュ・ピチュ遺跡は、南北に連なるふたつの峰、ワイナ・ピチュ峰からマチュ・ピチュ峰に連なる尾根の鞍部に立地し、急斜面の段々畑およびヴノカルタ川まで落ちる断崖絶壁に囲まれた立地環境にある。建築様式からインカ時代隆盛期に建築されことはほぼ確かと考えられるが、都市建設や存在に関する記録が全く残っていない。最近の考古学調査の物証および大規模な糧食備蓄機能が存在しない事実から、王の保養地とする説が最も合理的と考えられた。遺跡の中で特に神聖な場所とされる太陽神殿大塔部およびインティワタナの劣化状況の調査を実施し、状況を報告した。マチュ・ピチュ遺跡への交通等の観光概況についても報告した。
著者
佐々木 香織
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.15-24, 2012-04
被引用文献数
0 or 1

本研究は、今後の方言調査のための基礎的データを提供するために、県内で使われている2 チームに分けるためのジャンケンの掛け声を取り上げ、その地理的分布を記述する。全国的に散見できる掌と手甲を使ったウラオモテ系の掛け声の県内の分布状況についても探る。調査データから作成した分布図から、県内の広い範囲で、グートッパー系の掛け声が分布していたところに、新方言として新潟市東部ではグーロ系が、西部ではグーパー( ハー) 系が、そして新潟市をとりまく周辺地域ではグーとチョキを使うグットッチ( ョ) 系などが進出してきたと考えられる。各語形の伝播の経路や時期を明らかにするには、新潟市周辺地域( 出雲崎、燕市、三条市、加茂市、五泉市など) の年代別データが特に重要であることがわかった。また、ウラオモテ系については旧吉田町、上越市で使用例があったが少数だったため、詳細な分布状況や伝播経路などについては今後の課題である。
著者
吉田 博
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.135-142, 2007-05-30
被引用文献数
1 or 0

地域経済の振興、地域イメージを向上させていく方法として地域ブランドの確立がある。ここでは、その一例として、岩手県の県都盛岡市で推進している盛岡特産品ブランドの認証制度の導入と、より多くの人々に認証品が認知され、浸透していくための展開方法について考察した。盛岡市には、南部藩の伝統を継承する南部鉄器や南部染の伝統工芸品、庶民に親しまれる南部せんべい、わんこそば等全国的にも広く知れ渡っている特産品があるが、より多くの優れた特産品をブランドとして認証し、個々の商品はもとより、盛岡産品全体の価値・信用を高めていくために盛岡特産品ブランドの確立を目指している。
著者
槻木 公一
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.205-219, 2005-03-22

The spread of the Internet enables an individual to exchange abundant information across between companies or other individuals, and space-time. Now, it is the time when an individual becomes the leading role and asks for individualization of various services. Japanese tour style changes from a party tour to an independent tour, and a tourist also asks for individualized service. In this paper, the virtual tour space model corresponding to each tourist is described, and the Webbase architecture is proposed as structure of a tourism information system, which supports the whole action cycle over each tourist seamlessly.
著者
池田 嘉郎
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-7, 2007-05-30

本稿では、ロバート・サーヴィスの「レーニン」とエレーヌ・カレール=ダンコースの「レーニンとは何だったか」という、近年邦訳の出た二つのレーニン論を素材にして、ソ連期ロシア史研究の今後の可能性についての考察を行なう。サーヴィスの著作が、ロシア史の特殊な文脈を極力離れて議論を展開しようとするのに対して、カレール=ダンコースの著作は、ロシアの政治家としてのレーニンに一貫してこだわっている。本稿の筆者は、後者の姿勢により大きな可能性があると考えるものである。本稿の構成を示すと、史料状況・研究動向を概観した後、1)レーニンのパーソナリティ、2)レーニンとソ連体制の歴史的位置づけ、の2点について、両著作の内容を検討する。
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.33-51, 2013-04

本論文ではJGSS-2006 の個票データを用い、外食・中食需要関数と夫と妻ぞれぞれの夕食準備に関する拡張版自治モデルを推定した。その結果、主に明らかにされたのは以下の点である。第1 に、妻が常勤職に就いている場合には夫の所得が外食と弁当の利用と、妻の労働時間が中食の利用と、それぞれ有意な正の関係を持つことである。これに対し、第2 に、妻が非常勤職で働いている場合には妻の所得が中食の利用と、夫と妻の労働時間が外食と弁当の利用と、それぞれ有意な正の相関関係を持つことである。そして、第3 に、外食と弁当の利用は常勤で働く妻の夕食準備のみと有意水準は若干低いが負の相関関係を持つこと、つまり、外食と弁当の利用により夕食準備を軽減されるのは常勤職に就く妻だけということである。
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.21-32, 2013-04

本論文は、共稼ぎ夫婦の間で家事労働時間分担に関するジェンダー・ディスプレイが発生しているのかを実証的に検証した。通常、このジェンダー・ディスプレイの実証分析は個票データを用いた多変量解析によって行われるのに対し、本論文は、まずジェンダー・ディスプレイを家事生産アプローチから理論的に説明し、かつ、2006 年1月に実施したアンケート調査の結果から得られた理想と現実の家事労働時間分担比率に関するデータを用いた平均値の差の検定によってジェンダー・ディスプレイを実証的に検証したという点で、この分野における分析手法上の貢献が見られる。その実証分析の結果から、夫と妻の間で家事労働時間分担に関してはジェンダー・ディスプレイが発生し、夫が理想の家事労働時間分担比率よりも小さな比率しか担っていないのに対し、妻の家事労働時間分担比率は合理的な時間配分を行った場合よりもはるかに大きくなっており、したがってその効用が大きく低下しているものと考えられる。
著者
山下 功
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.83-91, 2011-04

本学ではFD の一環として授業評価アンケートを実施しているが,手作業による集計では莫大な工数を要するため,情報システムによる支援が必須である。そこで本稿では,本学における授業評価アンケートシステムの導入事例を通して,費用対効果の検証を行った。その結果,現行と従前のシステムを比較した場合,原価態様の相違と利用度の低さによって現行のシステムのほうが費用の点で不利であった。しかしながら,回避不能原価や当該システムに特有の効果を考慮して検討を行った結果,現行のシステムの優れている点を見つけることができた。現在は大学評価基準の改正という外的要因により授業評価アンケートを実施しているが,今後は授業評価アンケートの結果をもとに改善行動を行い,それを次なる計画や実行に反映していけるような組織的取組が求められる。
著者
正田 達夫 塚田 真一
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.179-192, 2002-03-19
被引用文献数
1 or 0

インターネット広告の特徴は、そのインタラクティブ性にあるといわれている。この報告では、先行研究からインタラクティブ性の定義とその重要性を考察し、またインターネット広告の一つであるウェブサイトのインタラクティブ性効果を研究した文献をリビューした上で、企業のウェブサイトの総合評価と部分評価の相関を考察することにある。事前の仮説は「ウェブサイトの評価には、ウェブサイトのインタラクティブ性が影響する」である。企業サイト20についてインターネット利用者600名にアンケート調査した結果によれば、対象企業サイト別の評価および600名全体の評価においてもこの仮説は検証された。その他の調査結果としては、コンテンツの充実度やレイアウトの分かりやすさがウェブサイトの総合評価と相関が高い。マネジリアル・インプリケーションとしては、広告主はウェブサイトの設計にあたっては、コンテンツの充実・更新頻度、分かりやすいレイアウトとともに、インタラクティブ性に配慮が必要なことである。