著者
神長 英輔
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-14, 2012-04

1950年代,全国各地で若者の合唱サークルが組織された.1940年代末に起こったこの運動はうたごえ運動と呼ばれた.うたごえ運動は文化運動,労働運動,反核平和運動と連携し,1950年代半ばに最盛期を迎えた.しかし,早くも1960年代前半には人気を失った.この運動はどのようにして同時代の若者の心をとらえたのか.またなぜ若者の心はうたごえ運動から離れていったのか.この論文は進化論の観点から文化を理解するミーム学の知見を用いてこの疑問に答える. ミームとは模倣であり,遺伝子に似た「文化の自己複製子」として理解される.うたごえ運動とは「正しく,美しく歌え」などの指示のミーム,「歌の力によって大衆を組織し,世を動かす」という物語のミーム,ミームとしての歌からなるミーム複合体である.うたごえ運動が拡大し,一転して衰えた過程はこれらのミームが複製された(されなくなった)過程として説明できる.
著者
上西園 武良 小柳 孝裕
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:24238465)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.96-102, 2016-04-01

缶入りコーンポタージュスープは、冬場の缶入りスープとして定着しており、幅広い年代の人に飲用されている。しかし、飲用後に缶内に粒コーンが残留し、粒コーンを全て飲み干すことができない、というユーザビリティ上の問題ある。この問題に対して、缶形状の改良やスープ粘度の調整などが提案されている。しかし、これら従来の研究では、本来注目すべき飲用時におけるユーザ動作に関して十分な解析がなされていない。そこで本研究では、飲用時におけるユーザ動作の人間工学的な解析を行い、飲用後の粒コーンの残留要因を明らかにした。まず、飲用時のユーザ動作の特徴と残留コーン数の関係を29 名の被験者実験によって明らかにした。この結果、残留コーン数は、種々のユーザ動作の特徴の中で、ユーザが何回に分けてスープを飲用するかの回数(以下では「飲む回数」)と強い相関(相関係数R=0.82)があることを見出した。さらに、この「飲む回数」とそのときの「缶の傾斜角度」を用いて模擬的な動作パターンを作成し、これを用いることで、被験者実験を行うことなく、残留コーン数に対するユーザ挙動を再現できることを示した。次に、缶内の粒コーンの挙動を観察するため、可視化を行った。金属缶は透明樹脂により透明化し、スープに関しては、ほぼ同一の粘性・密度を持つ透明液で置き換えた。これによって、飲用時における粒コーンの動きを観察可能にした。最後に、上記の模擬的な動作パターンを可視化した缶・スープで実行することにより、飲用時に粒コーンが残留する主要因は、飲み口の段差に粒コーンが引っかかってしまうことであることを実験的に明らかにした。
著者
佐々木 香織
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.15-24, 2012-04
被引用文献数
1

本研究は、今後の方言調査のための基礎的データを提供するために、県内で使われている2 チームに分けるためのジャンケンの掛け声を取り上げ、その地理的分布を記述する。全国的に散見できる掌と手甲を使ったウラオモテ系の掛け声の県内の分布状況についても探る。調査データから作成した分布図から、県内の広い範囲で、グートッパー系の掛け声が分布していたところに、新方言として新潟市東部ではグーロ系が、西部ではグーパー( ハー) 系が、そして新潟市をとりまく周辺地域ではグーとチョキを使うグットッチ( ョ) 系などが進出してきたと考えられる。各語形の伝播の経路や時期を明らかにするには、新潟市周辺地域( 出雲崎、燕市、三条市、加茂市、五泉市など) の年代別データが特に重要であることがわかった。また、ウラオモテ系については旧吉田町、上越市で使用例があったが少数だったため、詳細な分布状況や伝播経路などについては今後の課題である。
著者
安藤 潤
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.33-51, 2013-04

本論文ではJGSS-2006 の個票データを用い、外食・中食需要関数と夫と妻ぞれぞれの夕食準備に関する拡張版自治モデルを推定した。その結果、主に明らかにされたのは以下の点である。第1 に、妻が常勤職に就いている場合には夫の所得が外食と弁当の利用と、妻の労働時間が中食の利用と、それぞれ有意な正の関係を持つことである。これに対し、第2 に、妻が非常勤職で働いている場合には妻の所得が中食の利用と、夫と妻の労働時間が外食と弁当の利用と、それぞれ有意な正の相関関係を持つことである。そして、第3 に、外食と弁当の利用は常勤で働く妻の夕食準備のみと有意水準は若干低いが負の相関関係を持つこと、つまり、外食と弁当の利用により夕食準備を軽減されるのは常勤職に就く妻だけということである。
著者
苅部 恒徳
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.9-16, 2007-05-30

古英語叙事詩『ベーオウルフ』は8世紀中ごろイングランドで成立したと見られる、北欧を舞台に英雄ベーオウルフの生涯を物語った、ヨーロッパ語での最初の叙事詩である。前半は、今はなきイェーアタス国の若き英雄ベーオウルフが隣掴デネ(デンマーク)の宮廷を12年間悩まし続ける怪物グレンデル退治に向かい、これを首尾よく退治し、わが子の復讐に来襲し廷臣を連れ去った母親も、その湖底の棲家に赴いて退治する。(後半は50年後、故国の王となったベーオウルフが国土を焼き払う火龍と対決し、若武者の助太刀でこれを退治するも、自らも致命傷を負って死ぬ。)本論の「フロースガール王の説教」は前半のクライマックスをなすもので、怪物の湖底の棲家からグレンデルの首級と、彼らの毒血で刃が熔けてなくなった、巨人の作なる刀の柄を戦勝記念に持ち帰ったベーオウルフに、彼を迎えたデンマークの老賢王のフロースガールが垂れる説教の意図を以下に考察した。重々しい述べ方と内容によって、王としての威厳を保つためのものであったとの結論に達した。
著者
藤瀬 武彦 橋本 麻里 長崎 浩爾
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.227-256, 2004-03-22

The purpose of this study was to obtain the characteristics of physique, physical fitness, and motor ability in students of Niigata University of International and Information Studies. A total of 1891 male (18.3±0.8 yr; 18-28 yr) and 944 female (18.2±0.5 yr; 18-24 yr) students in the ten- year period from 1994 to 2003 were measured the anthropometric dimensions, physical fitness, motor ability, and 1RM lifts in the squat, bench press, and dead lift. The ratio of arm span, head length, and crotch to standing height were 1.012±0.023, 0.137±0.008, and 0.457±0.013 in males, and 1.005±0.021, 0.138±0.008, and 0.454±0.013 in females, respectively. The BMI (body mass index) and WHR (waist hip ratio) of males and females were 21.4±3.2 kg/m^2 and 0.804±0.055 in males, and 20.9±2.5 kg/m^2 and 0.717±0.037 in female, the former fell in with normal values of Japanese males and females aged 18 years. However, the skinfolds of those students showed a significantly higher than normal value (p<0.001), and the percentages of body fat (calculated by using skinfolds) were higher, too. In the physical fitness test (side step, vertical jump, back strength, grip strength, trunk extension, standing trunk flexion) and the motor ability test (50m dash, long jump, standing long jump endurance run), mean values of males and females showed significantly lower in almost all the tests than normal values (p<0.001). The values of the squat, bench press, and dead lift were 83.1±17.2 kg, 51.5±10.8 kg, and 116.5±18.7 kg in males, and 43.2±9.7 kg, 23.8±4.3 kg, and 70.0±11.7 kg in females, respectively. These results suggest that male and female students in this university possessed higher relative body fat and were inferior in physical fitness and motor ability to normal Japanese young people.
著者
佐々木 香織
出版者
新潟国際情報大学情報文化学部
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.15-24, 2012-04-01

本研究は、今後の方言調査のための基礎的データを提供するために、県内で使われている2 チームに分けるためのジャンケンの掛け声を取り上げ、その地理的分布を記述する。全国的に散見できる掌と手甲を使ったウラオモテ系の掛け声の県内の分布状況についても探る。調査データから作成した分布図から、県内の広い範囲で、グートッパー系の掛け声が分布していたところに、新方言として新潟市東部ではグーロ系が、西部ではグーパー( ハー) 系が、そして新潟市をとりまく周辺地域ではグーとチョキを使うグットッチ( ョ) 系などが進出してきたと考えられる。各語形の伝播の経路や時期を明らかにするには、新潟市周辺地域( 出雲崎、燕市、三条市、加茂市、五泉市など) の年代別データが特に重要であることがわかった。また、ウラオモテ系については旧吉田町、上越市で使用例があったが少数だったため、詳細な分布状況や伝播経路などについては今後の課題である。
著者
藤田 晴啓
出版者
新潟国際情報大学
雑誌
新潟国際情報大学情報文化学部紀要 (ISSN:1343490X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.27-38, 2014-04

クスコ、ヴィルカノタ川沿いの聖なる谷からマチュ・ピチュ遺跡にかけてのインカ時代遺跡群の調査を行い、遺跡群の地理的特徴、マチュ・ピチュ遺跡の立地、都市建築の歴史的背景、遺跡の劣化状況および保存施策について報告した。マチュ・ピチュ遺跡は、南北に連なるふたつの峰、ワイナ・ピチュ峰からマチュ・ピチュ峰に連なる尾根の鞍部に立地し、急斜面の段々畑およびヴノカルタ川まで落ちる断崖絶壁に囲まれた立地環境にある。建築様式からインカ時代隆盛期に建築されことはほぼ確かと考えられるが、都市建設や存在に関する記録が全く残っていない。最近の考古学調査の物証および大規模な糧食備蓄機能が存在しない事実から、王の保養地とする説が最も合理的と考えられた。遺跡の中で特に神聖な場所とされる太陽神殿大塔部およびインティワタナの劣化状況の調査を実施し、状況を報告した。マチュ・ピチュ遺跡への交通等の観光概況についても報告した。