著者
窪 幸治
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-222, 2014-03

本稿は、復興過程における土地の利用調整のための制度の今後の発展可能性を探るため、現行法制上の限界がどこにあるかを導き、立法上の指針を示すため、憲法上の制約、現行各法制とのバランス、東日本大震災における都市法制の刷新について概観した。まず、憲法29条は公共の福祉への適合という制約の下、財産権の形成の自由を立法府に与え、それを具体化した土地基本法は、土地の特性を踏まえた適正・計画的利用、開発利益の社会還元や受益者負担を土地に関する原則として掲げており、未だ抽象的ではあるが、土地利用調整の可能性は相当広いものと言える。さらなる具体化には、従来の法制における規制の目的、程度、手続保障等との均衡をとる必要があり、各法制から今後の検討素材を抽出した。都市法制の刷新としては、復興特区法により都市計画がない地域、農業利用が中心となる農業振興地域も含め、復興ニーズを起点とした復興整備計画の下、土地の計画的利用の途を開いた点が評価されよう。もっとも、復興まちづくりを住民主導で果たすための集団的な自己決定や、個人への直接的な支援をもたらすための生存権の論理(憲法25条)の強調など、残された課題が浮かび上がった。

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