著者
秋野 憲一
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.121-130, 2014-04

広大な面積を有する北海道においては,保健医療施策全般について地域格差,健康格差に対する対応が求められている.医療従事者にも恵まれ,経済的にも比較的良好な大都市から,医療従事者の確保もままならず人口流出が続き地域の存続すら危ぶまれている過疎地域まで含まれている.実際,北海道の歯科保健医療の状況については,北海道全体の12歳児一人平均う歯数が全国平均に比べ大きく劣っている他,道内の幼児及び学童のう蝕の地域格差も著しい状況となっている.歯科医療についても,心身障害者等に対する専門的な歯科医療においては,受診のため数時間の交通機関による移動を強いられる地域もあるなど,医療格差が著しい状況である.北海道では,このような幼児及び学童のう蝕の地域格差や障害者歯科医療の地域格差などの健康格差に対する施策として,従来の個人へのアプローチを重視した施策から公衆衛生的なアプローチを重視する施策へ転換を図った.幼児および学童のう蝕の地域格差対策として,先進県において確かな成果を挙げているフッ化物洗口事業の導入を図ることとし,平成21年6月に道議会において成立した「北海道歯・口の健康づくり推進条例」に明確に位置づけた.条例成立を機に,北海道保健福祉部に加え,北海道教育委員会においてもフッ化物洗口の普及を重要施策として取り組むこととなり,導入市町村数は,条例成立前の179市町村中27市町村から,平成25年10月末現在,159市町村まで急速に増加し,さらに今後5年以内に全市町村での導入を目指している.障害者歯科対策では,受診に数時間を要するなど多大な通院負担がある医療格差を踏まえて,北海道全域において心身障害者が身近な地域で一次歯科医療や定期的な歯科健診等を受けられることを目的に,協力医の知事指定を行う「北海道障がい者歯科医療協力医制度」を平成17年度に創設した.北海道内には21の二次医療圏があるが,全ての二次医療圏において協力医を1名以上指定することにより,地域の医療格差の縮小に寄与している.歯科保健における健康格差は,社会的要因の影響を受けやすいため,様々な健康課題の中でも顕著に出る傾向がある.このため保健政策を担う自治体の役割はとりわけ大きく,住民の健康格差縮小に向けてリーダーシップをとっていく必要がある.

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