- 著者
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山下 真里
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.4, pp.33-48, 2013-10-01
「銭」の異体字「[セン]」について,字体の出現・衰退時期と盛衰要因を考察した。字体の出現・衰退時期を手書き文書によって調査した結果,「[セン]」は明治5, 6年頃から出現し,昭和20年代後半以降に衰退することが明らかになった。このような「[セン]」の盛衰は貨幣制度の変化及び物価の上昇に伴う「銭」の使用頻度の変化によって引き起こされたものである。「銭」は明治4年に貨幣単位に採用されると使用頻度が増加したが,物価の上昇によって次第に使用頻度は減少し,昭和28年に金銭単位「銭」が廃止されると頻度の減少は決定的なものとなった。このような「銭」の頻度から見た盛衰時期と,文書調査結果における「[セン]」字の盛衰時期はほぼ一致することから,「[セン]」字の盛衰要因の一つに貨幣制度の変化及び物価の上昇があると考えられる。