- 著者
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平本 毅
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- no.13, pp.18-31, 2014-05-31
近年、サードセクターに属する市民団体への社会的な期待が高まるにつれ、NPOの数が増加している。NPO/非NPOの境界は曖昧だが、本稿ではこれを研究者にとっての定義上の問題と考えるのではなく、当事者にとっての実際的な問題として捉える。このことを考える際に、「志縁」組織として特徴づけられるNPOの、活動の現場における「志」をめぐる組織成員の相互交渉のあり方が注目されるが、これまでのNPO研究は組織活動の現場での、組織成員自身にとっての「志」のあり方を、少なくとも正面からは取り上げてこなかった。そのため本稿では小規模なNPO法人Yの事務局会議および理事会の録画データを使った会話分析から、組織成員が「志」として理解可能な事柄が相互行為の中で可視化され、それにより組織のNPOとしての性質が焦点化される「やり方」を記述する。調査の結果、次の事柄が明らかになった。1)「志」は、ランダムにあらわれるわけではない。2)「志」は、議論へのガバナンスの視点の導入を経由して可視化される。3)そのガバナンス上の意見を「正当化」するものとして「志」が使われる。4)意思決定上の具体的な意見に乗せられ、反論-再反論といった意見交換の中で示しあわれることによって、「志」は組織成員間で交渉される。これらの結果は、組織を特徴づけるものとしての「志」の性質にNPOの組織成員が志向していることを示す。