著者
寿台 順誠
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.14-22, 2013-09-26

本論文は、死別による悲嘆を克服する個人の心理的作業である「グリーフワーク」と、悲嘆の公的(宗教的・民俗的)表明である「喪の儀礼」について検討するものである。伝統的(近代主義的)モデルでは、グリーフワークの目的は遺族が故人との関係を断ち切って、自律することだとされてきた。しかし、近年では、むしろ遺族と故人との間の象徴的な絆の継続を重視する新しいモデルが優勢になり、そこでは日本の祖先崇拝が「継続する絆」を示すものとして評価されてきた。ところが、当の日本では少子高齢化や個人主義化によって伝統的な儀礼が衰退しつつあり、葬送の領域でも盛んに「自由」(自己決定)が主張されるようになっている。しかし、それだけでは無秩序な商品化(格差)への歯止めにはならない。従って、今後、「喪の儀礼」は「人間(死者)の尊厳」を根拠にして執行されるべきである。尊厳をもって故人を遇するとは、その生涯を語り継ぐことである(以下、適宜、本文冒頭の【概念図】参照)。

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