著者
鍵 直樹
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.350-358, 2014-08

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)における空気環境に関する建築物環境衛生管理基準の項目として,浮遊粉じん,二酸化炭素,一酸化炭素,ホルムアルデヒドがある.しかし,室内の空気汚染物質については,上記の他にも数多くある.そこで本報告では,室内空気汚染に関する問題及び研究動向について,海外のレビュー論文を元に概説すると共に,近年の研究の動向から新たに注目される今後の室内空気汚染の課題について検討を行った.1950年代からの室内汚染の変遷としては,建築材料,内装材料の変化,生活習慣の変化などから,汚染物質が減少したもの,増加したものがあること,今後は浮遊微生物やそれに関連して微生物から発生する微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)などが課題となることを示した.更に,今後の注目すべき室内空気汚染について,MVOC,微粒子及びハウスダストについて,既往の研究を元に概説した.MVOCについては,それぞれの微生物に対して発生するVOCについて紹介し,それぞれのVOCと健康影響に関する知見について示したが,未だMVOCの直接的な影響において不明な点が多いことを述べた.微粒子については,PM2.5を中心にその室内発生源と,PM2.5濃度の特徴について述べた.室内の発生源については,燃焼によるものの他に,化学物質の二次生成やレーザープリンタからの超微粒子の発生などについても示し,室内濃度の傾向としては,建築物の空調機に装着されているエアフィルタの重要性について示唆した.最後に,ハウスダストの問題として,ハウスダストに吸着する準揮発性有機化合物(SVOC)と健康影響,ハウスダスト中に含有するSVOC濃度の現状について示し,今後のデータの蓄積により,SVOCと症状との因果関係についての議論の期待について述べた.

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