- 著者
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阿部 和正
北川 純
中久木 一乘
- 出版者
- 有限責任中間法人日本口腔衛生学会
- 雑誌
- 口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.343-350, 2014-07-30
タバコの煙はさまざまな疾患のリスクファクターである.歯科保健指導の担い手である歯科医師のタバコ問題への理解は,社会的に重要であることから,禁煙の啓発活動には歯科医師の考え方の把握が不可欠である.そこで,日本歯科医師会ならびに47都道府県歯科医師会を対象にタバコ問題に対する考え方の現状について,アンケート調査を行った.対象は各都道府県の歯科医師会とし,調査は2012年10月に実施した.集計の結果,各都道府県歯科医師会館で開催される学会,セミナー・研修会および展示会会場での完全禁煙率は約90%と予想より高かった.しかし,それぞれのロビーでは約70%と低く,各懇親会会場ではさらに低い48%であった.会員喫煙率の調査率は実施予定も含めて12%ときわめて低く,禁煙への関心は低いものと考えられた.受動喫煙防止に関する「健康増進法」の認知度は94%と高かったが,「世界保健機関(以下WHOと略す)たばこ規制枠組条約(略称:FCTC)」は56%と認知度が低かった.同様に行った2003年および2004年の調査と比較したところ,9年間で歯科医師会敷地内および建物内の完全禁煙率は顕著に上昇していた.これらの結果から,各歯科医師会の禁煙に対する意識は大幅に進展しているものの,いまだに喫煙可能な場所が存在することや歯科医師会会員の喫煙率を把握していないことなど,改善すべき点が残されていると考えられる.