- 著者
 
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             櫻井 義秀
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 日本宗教学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 宗教研究 (ISSN:03873293)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.88, no.2, pp.315-342, 2014-09-30 
 
          
          
          
        
        
        
        日本社会は人口減少とグローバリゼーションによって今後数十年のうちに大きく変わることが予想される。地域社会や家族において個人化が進み、労働や福祉の領域では個人化を前提に社会制度の再構築が進められていく。そうして人生の様々なリスクを回避する仕組みが国家に吸収されたり、財政難のために個人の自己責任に帰されたりすることで、人々の不安は増幅され、生活満足度としての幸福感は低下する。こうした状況において宗教のみが安泰ということはない。日本の伝統宗教が根ざしてきた地域や家族の共同性は浸食され、人々の切実な求めに応じられない教団は衰退を余儀なくされるだろう。本稿では近年の幸福研究を参照しながら、幸福とソーシャル・キャピタルの関係を論じる。互いに承認される人間関係や前向きな人生観を提供できる場においてこそ、人々はしあわせや希望を感じることができる。現代宗教は人々の要求に応えられるだろうか。