著者
相原里美
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.135-152, 2014-09

丁玲は1929年初めに短編小説『慶雲里の小部で』を発表した。この物語には、阿英という妓女の一日の生活や内面世界、妓楼での人間模様が詳細に描かれている。ここには、当時の妓女を主人公にした小説としては珍しく、女性の悲壮感や絶望感、あるいは娼妓制度への憤りなどが前面に描かれているわけではない。むしろ、阿英は妓楼での生活に満足しているかのようにさえ描かれている。その一方で、阿英は故郷の陳老三のことを思い出し、彼の元へ帰ることを何度も夢想するのだが、結局妓楼に残って妓女として働くことを選択する。本稿では、阿英を通して語られる女性の内面世界から、中国女性の近代的自我形成と性についての分析を試みたい。

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